君のおめがねにかなうまで
内田ヨシキ
【KAC20248】君のおめがねにかなうまで
「先輩、さっきメガネについて遺憾な意見を聞いたんですよ」
のんびり本を読んでいた先輩は、ちらりと瞳をあげた。
「また? 君、本当メガネ好きよね」
「普段は地味メガネだけど、外したら美人ならアリ……ってふざけんなですよ」
「外すなってこと?」
「いえ、そもそも外したら美人って、それは似合うメガネをかけてなかったってことです! 似合うメガネをかけてれば普段から地味だなんてバカにされないわけで! むしろメガネ外したら物足りないくらいになって欲しい!」
「それ、メガネかけてる人への怒り?」
「それも少しあります。服とか髪型とかお化粧とか気にするなら、メガネにも気を遣って欲しいというか。好きな人へのアピールにも使えっていうか」
「ファッション気にしない子だから地味メガネなんだと思うけど」
「まあ、そうなのかもですけど……」
先輩は小さくため息をついて本を閉じた。こちらに体を向ける。
「でも、そっか。君はメガネをかけるからには似合うものにして欲しいんだ?」
「そりゃそうです。いいですか先輩、人がメガネを選ぶんじゃないんです。メガネが人を選ぶんです」
「急に哲学」
「だいたい先輩もなんですか、そのメガネ。前はかけてなかったのに急にかけはじめて。しかも似合ってない。せっかくの美人が台無しですよ」
「んー、失敗だったと今、気づいたよ」
「失敗?」
「君、メガネかけてるならいいってわけじゃないんだなぁって」
「当たり前ですよ」
「これ伊達なんだよねえ……」
「はあ、なんでわざわざ伊達を?」
「ちなみに、メガネを外したら美人な子が、似合うメガネつけて普段から美人になる瞬間は、どう思う?」
「最高です。二度美味しいです」
「うん、じゃあ今度メガネ選ぶの手伝ってよ。君のおめがねにかなうように」
「もちろんいいですよ! 先輩ならわかってくれると思ってました! でもなんで僕? お友達のほうがよくないですか?」
「……うん。ついでに君は、心の目にメガネをかけようか」
君のおめがねにかなうまで 内田ヨシキ @enjoy_creation
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