第二十四話「崩壊」

 それを願えば、おしまいです。

 

 光の粒たちが踊るように宙を舞う。

「このふざけた笑い話のような世界を」

 顔を上げた角山の瞳は、赤紫色になっていた。

 

「壊してくれ!」

 

 女神は咄嗟に手を離したが、もう遅い。魔法陣は一層強く光り出し、大聖堂内のステンドグラスが一斉に音を立てて砕け散った。その破片たちは、輝きながらゆっくりと空中を移動している。女神も岸島も綾子も千崎も、堪らず聖堂内へ入ってきた胃炭たちも、皆一様に驚愕の表情をしている。角山は笑っていた。鐘の音が鳴り響く。

「私の世界が!」

 窓枠の外、次々に崩壊していく世界を見て、岸島は叫んだ。

「私の理想が! どうして、お前のような腰抜けに‼︎ ありえない……これは、これは何かの間違いだ‼︎」

 頭を抱え、喚く岸島。角山はそんな岸島を指差し、先ほどまでの笑顔を消して言い放つ。

「やーいやーい、負けを認められない人格形成の敗北者め」

 岸島はその場で蹲り唸った。

 周囲は大混乱だ。

「この世、終わりですね!」

「外、めちゃくちゃになってんすけど!」

「センセイと心中できるなら、わたくしは構いませんわ……」

「要注意人物どころじゃないな」

「朔、これ一応聞くけど大丈夫なんだよな⁈」

 皆、各々の感情を口々に角山に向かって叫んでいる。

「知ったことか‼︎」

 それを角山は、この一言で片付けた。そして、笑った。大きな声で笑った。変色した瞳をギラギラとさせながら、大いに愉快そうに。それを見て、綾子も頬を緩ませた。近くに降り注いだ一欠片の色ガラスが、一際強く光を反射した。それが眩しくて、角山は目を閉じた。真っ白な視界に、角山の意識は引き込まれていった。

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