ツッコミどころの多い眼鏡屋さん

ののあ@各書店で書籍発売中

第1話


 福井県にあるメガネの町に出張。

 せっかくなのでメガネのひとつでも見繕ってみようと考えた私は、目についた雰囲気の良さげな店に足を踏み入れた。


「いらっしゃいませー」


 大阪の服装がパンサーなおばちゃんっぽい店員に驚きつつ、店内を見て回る。


「色々あるんだなぁ。カラフルなの、渋い色合い。お、これはモノクルかな?」


 想像以上の種類に出迎えられて、気分はテーマパークである。

 少しずつ横に移動しながら陳列されたメガネを眺めるだけで楽しい。これは思わず買っちゃいそうだ。


 すると、なんだか不思議な物を見つけたので店員さんに尋ねてみた。


「すみません、この透けるメガネとは?」

「あー、それはねぇ、物が透けて見えるメガネだね」


 なにそれスゴイ。


「骨組みが見えるスケルトンなメガネなんです?」

「かけてみれば分かるよ」


 促されるままにかけると、店の外が透けて見えた。

 

「超技術!!」

「横のダイヤルを回すと透け具合を調整できるよ。合言葉はマシマシ、ヘルヘルだね」

「幾らですか?」

「百万ガバチョ」


 持ってねえ!? つうかどこのお金だそれは初耳だわ!!


「お買い得だね!」

「えっと、じゃあこっちのメガネは……」

「かけてみれば分かるよ」


 言われるままにメガネを装着。

 おばちゃんが手鏡を渡してきたので確認する。


「目が●び太くんみたいになるメガネだよ」

「奇怪すぎる!!! 新手のジョークグッズかよ!」


→ 3 3


「●び太くん好きにはマストだね」

「の●太くん好きがそんなに多いの?」

「日本が誇る有名作品なんだから当たり前でしょ。それともコ●ン君のほうが好きなクチ? 発信機付き追跡メガネもあるよ」


 真実はいつもひとつじゃねーんだわ。


「ほ、他! 何かおススメのとかあります?」

「お客さん、もしかしてメガネ好き? それならとっときのがあるよ」


 思わせぶりにおばちゃんが取り出したのは、黒いメガネだった。


「これは……?」

「付けるだけであら不思議。覚えたものを忘れなくなる凄いメガネさ」

「そりゃすごい! 記憶力を向上させるってことですか」


 どういう原理かわからんけど。


「どう使うんです?」

「かけてみて。そうそう、で、次にこのピカッ! と光って記憶を消し飛ばしそうな装置をじっと見て~~。はい、ふらーっしゅ」


 カッ!!


「おおすごい! そんな某国の対宇宙人秘密組織が使ってそうな怪しい光を喰らっても記憶が消えてな――って!! そっちの道具の方が凄いだろ?!!」


 とどのつまりこの黒いメガネ、ただのサングラスじゃねえかその辺で売ってるわ!!



「あれー? ここはどこ、私は誰???」

「あんたの記憶が消えてどーすんだよ!!?」


 その後、あの怪しいメガネ屋さんがどーなったかは知らない――。




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