第6話 最後の晩餐

 二週間後――


 優綺ゆうきちゃんの命に別状はなかった。

 内臓に多少の損傷があったものの、目立った骨折などもなかったのは、不幸中の幸いだった。

 運が良かったこともあったが、子どもの生命力って凄いと思う。半月で退院だもの。本当に凄い。


 あの時見た『未来視Vision』。

 血まみれの優綺ちゃんと、血に染まったオレの手。

 あれは今回の事故が見えていたのだ。

 オレが殺したわけではなかった。


 しかし、もうひとつの『未来視Vision』。

 オレが覆いかぶさり、顔を歪めて泣いている裸の智子ともこさん。

 これに関しては、どう考えてもオレが襲いかかっている。

 それが現実にならないように、ふたりと距離を置きたい。


「おにいちゃん、ありがとー」

「さぁさ、たくさん食べてくださいね」


 ふたりの部屋に招かれて、優綺ちゃん退院のお祝いをするオレたち。オレへの御礼も兼ねているらしい。智子さんが作ってくれたたくさんのご馳走を前に、優綺ちゃんはオレの膝の上で大はしゃぎだ。


「すみません、優綺が……」

「いえいえ、気にしないでください!」


 困った顔をする智子さんに笑顔で答えた。

 智子さんの料理に舌鼓を打ち、オレの部屋から持ってきたゲーム機を使って、三人でパーティゲームを楽しんだ。


 これを最後の思い出にしよう。

 早く引っ越し先を見つけなきゃな。


 疲れて眠る優綺ちゃんを隣の部屋の布団に寝かせて、オレは智子さんとふたりきり。オレはマズいと思い、自分の部屋に帰ろうと腰を上げた。

 そんなオレの服を掴む智子さん。


「……坂上さん」

「は、はい」

「……私たちを避けていたのは……なぜですか……?」

「…………」

「……私たちが嫌いになりましたか……?」

「そんなこと……」

「……私の顔の傷が気持ち悪いからですか……?」

「違う!」

「……じゃあ、なぜ……」


 オレは悩んだ末にもう一度腰を下ろし、智子さんと向かい合った。



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