第7話 初めて知った感情
オレは悩んだ末にもう一度腰を下ろし、
オレは自分のことを話した。目つきの悪さで苦労してきたこと、心に渦巻くドス黒い感情のこと……。
そして、未来が見えるめがねの話もした。オレが智子さんをレイプする映像のことも……
「……私たちを守るために……」
「近日中にここを出ていきますので、安心してください」
微笑むオレを前に、スッと立ち上がった智子さん。
「!」
智子さんは、突然服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょ、なにを……!」
焦るオレを無視して、智子さんは一糸まとわぬ姿になった。
「私が望んだことです。合意の上ならレイプになりませんよ」
智子さんはオレの手を握った。
そのままオレを抱き締める智子さん。
女性に触れたことのないオレは、智子さんにリードしてもらいながら、身体を重ね合わせた。
でも、智子さんは顔を歪めて泣き始めてしまう。
「もうやめましょう。これは無かったことにしましょう」
オレの言葉に首を左右に振る智子さん。
「嬉しいの……私じゃ無理かと思っていたけど……私を抱いてくれて、ありがとう……」
そんなこと言わないでくれ。『ありがとう』はオレのセリフだ。オレが腐らずに頑張ってこれたのは、智子さんと優綺ちゃんがオレに笑顔を向けてくれたからなのだから。
オレと重なり、嬉し涙を流す智子さんに胸が熱くなる。こんな気持ち初めてだ。
オレは智子さんと口づけを交わす。
「オレ、再就職頑張りますから……真剣にオレと付き合ってください」
「な、なに言ってるの! 坂上さん、まだ若いんだから――」
「年なんか関係ないです」
「したい時は、いつでもさせてあげるから――」
「そんな気持ちで智子さんを抱きません」
智子さんの言葉にかぶせ続けるオレ。
「オレじゃ優綺ちゃんのパパにはなれませんか?」
オレの言葉に驚き、そして涙を流してオレにしがみつく智子さん。
「優綺にも坂上さんの血が流れています。あの子のパパになってもらえますか……?」
智子さんは声を震わせた。
そう、あの時輸血した血液の中には、オレの血も入っているのだ。
オレは智子さんの言葉を肯定するように強く抱き締めた。
生まれて初めてひとを愛することを知ったオレ。
オレの心に渦巻いていた世の中を憎む気持ちは、いつしか消えていた。
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