まずは色褪せた世界

 虫眼鏡の正しい使い方も、虫眼鏡の適切な使い道も、何もわからなかったけれど。

 幼い頃、部屋の中いっぱいに置かれたおもちゃみたいに。

 私はわからないまま手にとって。

 正しいかも、適切かどうかも、何も考えずに。

 ただ、楽しいかを。

 ただ、私がやりたいことを。

 それだけを考えて、広がる世界に幸せな終わり方を与えることにした。


 虫眼鏡を覗き込んだ私の前に、広がったたくさんの世界の一つ。


 それは、色褪せた世界だった。


 私は、最初の旅をそこに決めた。



 色褪せた世界に立ち尽くしていたのは、一人の少女だった。

 彼女は、孤独だと嘆いた。

 どれだけ頑張っていても認められず、どれだけ磨いても輝かない。

 自分を見る全ての人が自分を追い立てるように感じて怖くなる。

 誰も私を見ることはないし、私も誰も見られない。

 誰かと無条件で関わりたい。

 誰かに無条件で愛されたい。

 誰かを無条件で愛したい。

 彼女は、涙を流しながら、そう呟いた。


 私は彼女の願いを叶えることにした。

 虫眼鏡を動かして、一つの世界を映す。

 そして、彼女に飛び込むように促した。

 最初こそ、戸惑っていた彼女も、これ以上この世界にいることが辛かったようで飛び込んだ。

 よっぽど、この色褪せた世界は、苦痛でしかない世界なのだろう。

 私の世界もそうだったから、彼女の気持ちは手に取るようにわかった。

 飛び込んだ彼女は、モノクロと無色透明な世界に色彩りを与えた。

 それはありきたりな物語ではなかったけれど、それはとても幸せな終わり方だった。



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