語られなかったのは、8つ目の物語

うめもも さくら

現実だろうと、物語だろうと、望んだのは幸せな終わり方

 私の物語を語ろうか。

 ひどく残酷で、凄惨で、惨たらしい物語。

 けれど、これが最後なら。

 最期くらいは、笑って終わりにしたい。

 そう願った私の前に落ちてきたのは虫眼鏡。

 神様が取り落とした一つの虫眼鏡。

 これは物語の結末を変えることが出来るのだと。

 神様は自慢げに言った。

 人の人生とは、いわゆる、神様たちが読み耽る本のために綴られた物語だと言った。

 けれど自身の結末は変えることは出来ないのだと。

 神様は皮肉まじりに笑った。

 人の人生なんて、さしづめ、神々が暇を埋めるために作られた創作物だと嘲笑った。


――それでも、この虫眼鏡を取るか?


 神様に問われた私は、迷うことなく手を伸ばした。

 虫眼鏡を手にした私に神様は言った。


――せいぜい楽しませてくれよ?


 虫眼鏡を覗き込むと、その奥には、たくさんの世界が広がっていた。

 神様は最後に笑った。


――人の行路に幸あれ……


 そうして、私は最後の最期に旅に出た。

 虫眼鏡一つだけを持って。



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