第14話 Mと666人委員会
ようやく陽菜の説明が始まったわけだが。
「私はMの支配からの解放から戦う一人なの。この時代にタイムトラベルして来たのは、そんな今を……ああ直也達からしたら未来になるのかな。そんな未来を変えるため」
未来を変えるためにタイムトラベルして来た、か……
冗談を言っているような顔では無かった。話しているのが俺だったら納得のいくだが、やはり、聞くだに妄想超特急な響きである。
容姿なく話に食いついた奴が居た。空気読め。いやもとい。
「Mって誰なんだ?なんで人間達が支配されている?」
晋也だった。
「そもそも現在ではタイムトラベル技術は確立されていないはずだ」
陽菜は一つ咳払いして、話しを続ける。
「世界を支配してるのはMとそのバックにいる666人委員会って奴ら。その支援を得たMがタイムマシン開発に成功した事によって666人委員会とMは時間っていう四つ目の時限に干渉出来る唯一の存在になった。その結果たった一年で、世界の秩序は全て塗り替えられたってわけ」
666人委員会。世界を影から操るエリート集団。陰謀論では定番の、いわゆるラスボス。実在したのか……
そして、あー陰謀論ですねはいはいと、とうんざりとした顔の晋也に、陽菜は向き直った。
「そんでもって晋也は、未来ではMの右腕として働いている」
晋也はしばし首をひねっていたが。
「……は?お、俺がMの右腕!?なんだそれ!?」
そして泡を食っている晋也の様子を、陽菜はどこかの表情で見やっていた。
「タイムリープ概念を初めて発見し、その後もMのタイムマシン開発に貢献した人物。それが晋也って聞かされてる」
「お、俺がMのタイムマシン開発に携わるって事か?信じられない。Mは人間達を支配しているんだぞ?そんな奴の所に行くつもりは無い!」
晋也が望んでMに従うわけがない。
……きっと、脅されたか何かしたのだろう。
しかし、そこでふと別の疑問が湧く。
晋也がタイムマシンの開発功労者になっている。では、俺や龍二は一体何になっているのだ?
そう訊くと、陽菜はふるふると首を振った。
「直也や龍二はテロリスト扱いされている。結構有名。これってすごいんだよ。私達の時代ではね、有名なのに捕まらないっていうのはありえないんだ。Mのタイムマシンを裏をかけるって事だから」
「え……マジか?」
この俺と龍二がテロリスト扱いだと!?
というか晋也が科学者で俺と龍二がテロリストというのは、同じ幼馴染としてなんだか酷くないだろうか。ひょっとして差別を受けてないか?
なんだか割り切れない俺をよそに、晋也が陽菜に質問をぶつけた。
「おい、俺がMに協力しているっていうのがまだ信じられないんだが……未来の俺はなんてて言っていた?」
「会ったことは一度もない。それに、未来には死んじゃってたし……」
陽菜の言葉に、晋也は呆然とする。
「さらっと凄いこと言うなお前」
「私の時代には、人の寿命が二通り居るんだ。極端に長い人と、不審な亡くなり方をする若い人。Mに逆らう様な人はどんどん消されていく」
「じゃあ俺も?」
どこか値踏みする様な視線をくれる。
「……もしかしたら、晋也もMに利用されたのかもしれない。例えば両親を人質に取られて、無理やり研究させられたとか。晋也みたいな科学者を消すなんて考えにくいかな」
そう、晋也が悪い奴なわけがないのだ。そんなことはすぐわかる。とても晋也は責められない。
「俺の両親が危ないってのか!?」
晋也がここにいる間に、Mが晋也の両親を拉致するなんていうシナリオもありえる。そんなバカな、とはもう笑い飛ばせない。
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