第13話 陽菜からの説明

 俺は陽菜に詰め寄る。逃がさない様に、アパートの壁を背にさせて……なぜか知らないが、陽菜が相手だと犯罪っぽいシチュエーションになる気がする。

「なんで慌てて逃げた?お前は何をしようとしていたんだ?」

 だが、俺の剣幕に、陽菜は気圧されはしなかった。

「私のせいだよ。のんびりしてたから、Mの好きにさせちゃったんだ……」

 それどころか、むしろ陽菜のほうからすがりついてきて、俺は思わずたじろいでしまう。

「ねえ本当なの!?このループが永遠に終わらないって……」

「じ……事実だ。俺はタイムリープして永遠に水曜日を繰り返している」

 その俺の返答に、陽菜はかすかに首を

「君のタイムリープ能力……安定したんだ」

「それより、お前のせいとはどういう事だ?『時の祠』となんの関係が?」

 その俺の問いには答えずに、陽菜は唇をかむ。そうして、しばらく目を伏せ……

 陽菜は、思い詰めた様に、俺の目を見上げた。

「全部話すよ……私のこと。話さなくちゃいけないと思うから。幼馴染達には」

「幼馴染達……つまり俺と龍二と晋也にってことか?」

 なぜ龍二と晋也の名前が出てくるのか。それも陽菜が話してくれればわかるのだろうか。

 話を聞くにしてもまず、俺の家に帰った方がいい。そう判断した俺は陽菜と手を繋ぎ自分の家に帰った。手を繋いでいる時の陽菜の顔がかすかにほころんでいたのに少しホッとする。


 自分の家の冷蔵庫からコカコーラを取り出してあおり、俺はようやく一息つく。

「陽菜、そろそろ話してもらおうか」

 陽菜はソファに座り直した。先を促そうとする俺をじっと見上げて、少しだけバツが悪そうな表情をする。

「って言っても話せることなんてほとんどないよ。私は未来から来た。その時代は通称Mと呼ばれる人物に支配されるディストピアで、争いは完全に消えたけど自由は奪われた……ってこれも説明する?」

「未来人すげーな。パネぇ〜。握手してもらっていいか?」

 実に適当な茶々を入れる龍二。そっちはスルーして、晋也が質問した。

「ディストピアってのは極端化社会のことだな。全体主義の最もひどい状態。例えば龍二がラーメンを食いたいと思っても、今日がラーメンを食べていい日でないと許されない、もし食べたら裁判なしで実刑……そんな社会だな」

 そんなんこまるぜ!!……と慌てている龍二は放っておく。

 なぜ龍二や晋也が陽菜の席に同席しているのかというと、話は遡る。

 俺が陽菜と共に家に帰ると、龍二と晋也も俺の家の前に来ていたのだ。

「お前が教室から飛び出したからよ、あとは行く場所っていったら自分の家くらいだろ?」

「俺は別にどうでも良かったんだけど。暇だから探すの手伝えって言われて……なにコソコソ話してんの?」

 これから陽菜と晋也と三人で重要な話があるのだ。と説得を試みるも。

「俺も混ぜろよー!」

 と、龍二は全く帰ってくれる様子がなかった。ど、どうする?と晋也に目配せするが、こういう時の龍二は頑固で、厄介だ。

 その時、説得に手を焼いた俺たちを見かねてか、おもむろに陽菜が口を挿んで来たのだった。


「私は龍二にも話を聞いてもらいたい。龍二にも関係ある話だと思うし」

 …….ま、まあ、当時者である陽菜がそう言うのなら、俺に異論はない。ただしループが永遠に終わらないっていう事だけは、くれぐれも悟られないようにと釘を刺しておいた。

 陽菜の正体については俺から二人に話す事にした。


 陽菜が時空神:ユキとして世界線に干渉していて、実際には未来から来ていたこと。もっとも龍二は陽菜が時空神:ユキという時点で頭から煙を噴いていた。今何歳なのか計算しようとしてわからなくなったと言う時点で、どこまで理解できているかは極めて疑わしい

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