七、
7-1、
――パコンっ、スチャラカチャンポロペロリン、スッポンポンっ♪ ぱふぱふっ♪
「さあっ、始まりました。みんな大好き“タマキンのブラブラ日本男児Ch.”のお時間っ! 本日は大事件が発生しましたので、緊急ライブをお届け致します。特大有料級ですが何とナント、いつも通り無料でご視聴頂けます。いよ~っ、持ってけドロボーっ!」
その代わり、内容を気に入って下さった方々はジャンジャン拡散して下さい。いやいや遠慮は要りませんよ……と、いつものオープニングトークである。
すかさず、拍手喝采……の効果音。
普段は座敷に四人並んで座り、撮影しているが、今日はリビングでの撮影である。四人、ゆったりとソファーに座り、すこし遠方にカメラの三脚を立て映している。
「さて、本日のタイトルですが」
ででんっ。
――謎の巨大遮光器土偶メカ出現! 死闘、そして撃退までの顛末!!
ガトリング彰善の素早いPC操作により、デカデカとタイトル字幕が表示された。
いつもの如く、
――謎メカ登場!?
――マジかよwww
といったコメントが画面を流れる。
緊急ライブゆえ、まだ視聴者数が少なく、普段よりコメントが少ない。が、その間もどんどん視聴者数カウント値が上昇する。
「というわけで、事情はタイトルの通りでございます。私達は無届けで、
で、複数の引越会社を使い、ブツをあっちにやったりこっちに移動したり……と翻弄し、見事、防衛に成功した、と顛末を簡潔に解説する。
「ところがその直後、目つきの悪いセクシーねえちゃん、ひょろガリ出っ歯のオカマ、青髭のプロレスラーみたいな謎の三人組が現れたんです」
「そうそう。そうなのよ」
と、傍らで笙歌が相槌を打つ。
大きく頷く、金作。
「そいつらがナント、今朝方、全長一五m程の巨大謎メカに乗って、わたくしタマキン宅へと攻め込んで来たのですよ。ブツをよこせ、と」
派手な効果音と共に、画面は謎メカ実写へと変わった。
全てが片付いた後、地にデカデカと横たわった巨大遮光器土偶メカを、ウドさあ倫輔が遺跡調査時に使用するドローンにて空撮したものである。
――マジで謎メカじゃんw
――亀ヶ岡の遮光器土偶、まんまかよww
――再現度スゲえ。
早速コメントが怒涛の如く、画面を流れる。
「というわけで、三人組+謎メカと戦闘になったわけですが」
ここで彰善謹製の戦況解説画像へと切り替わる。金作宅前の画像に、亀ヶ岡遮光器土偶画像を張り合わせた再現映像だ。
「そうそう。こういう感じで攻めてきたんです」
彼らが事前にガソリン三五〇リッターを購入していたのは判っていた。だから謎メカが登場する可能性は、一応想定していた。それが実際にやってきた!
だが我々は、得物のチョイスを誤った……。
チョ~ンっ♪
「まずガトリングが、謎メカの足部分に、刀で斬り掛かったんですよね」
すかさず画面が、人気時代劇“必殺
「続いてウドさあが、果敢にも相撲技で足部分に取り付き……」
画面がモンゴル人力士の取り組みシーンに変わり、トンッ、トトントンッ♪、と
「おいっ、
倫輔が抗議し、傍らの彰善の膝をピシリと叩く。ニヒヒと笑う、彰善。
「まあ、そういう具合に謎メカと対決したわけですが、何しろこんな巨大メカですから、剣術や相撲技などでは歯が立たない。ガトリングの古備前正恒など、一発で刃こぼれする有り様。さて、どうするか!?」
金作が講釈調でまくしたてる。
「笙歌も薙刀を抱えていましたが、それとて謎メカに歯が立たないのは一目瞭然。……おまけにここで、三人組は飛び道具を使ってきた! その名もナント、“ビーム光線”!!」
――うわ。まさかのビーム光線www
――昭和かよww
――ヤバい。みんな逃げてぇ~~~~
視聴者数が五万人を超え、そろそろコメントも賑やかになってきた。
「命の危険を感じ、ギョっと固まった我々四人っ! だがしかぁし!」
画面に大写しとなる、メカとビーム光線の図解画像。
「発射口は土偶の目部分に取り付けられていて、しかも
なにしろ全長一五m程ですからねえ。目の部分なんて、地上高一〇m以上です。そこから真っ直ぐ、真正面に飛ぶだけですから、我々の遥か頭上を真っ直ぐ飛び去っただけ。……
たちまち、
――どんなギャグだよwww
――腹痛えwww
――やっぱ昭和だわwww
といったコメントに満ちた。
「……とまあ、そんな具合でして。で、我々が、先日の動画でも公表しましたサイコキネシスにて、華麗に謎メカを倒したんですね」
そのまま倒すと向かいの民家まで壊してしまいますから、そこが工夫のしどころだったわけですが。具体的に言うと、わたくしタマキンがサイコキネシスで謎メカを浮上させ、笙歌が角度を付けてから、後ろに押し倒す……と。
「そういうわけで、見事三人組を無力化し、撃退に成功したわけです。わははは」
「じゃっどじゃっどー。こン技はシンプルで、習得もお手軽じゃっとですが、非常に有効じゃち今回痛感しもした。何トンあっとかも判らん巨大メカでも、実にあっさり浮かせられるとです。まこちスゴか技じゃ」
倫輔が興奮気味の口調で補足する。
しばらく画面上に、多数のコメントが流れた。
――ウドさあの薩摩弁が全然わからん。
――標準語に翻訳ぷりーず。
――アツくなってるウドさあ、可愛い。抱いて~♡
頭を掻きつつ苦笑いする、倫輔。
「そういうわけでして、ひとまず今回は謎の敵対勢力を無事に追い払うことが出来ました」
「でもまあ、巨大メカまで作って襲ってくる連中がいる、と判明したわけです。急ごしらえだったらしく、武装の設計などはあんぽんたんでしたが、全長一五mもある謎メカを製造する、技術力や資金力のある敵対勢力が存在するというわけです」
「じゃっとです。縄文文書の発見は、そイだけ価値が高いっちゅう証拠じゃと考えにゃ、いかんとでしょうね」
「あの謎メカを解析して、オレ達もビーム光線を開発するか……。ついでに自衛隊にも売り込む、と」
「ちょっと待ってよ! 物騒なコト言わないでよ~」
わふっ、とカメラのフレーム外から、まんぷく丸がひと鳴きした。ツッコミを入れたつもりだろうか。
「そんなこんなで本日の事件の顛末、以上です。いずれにせよ、強大な敵勢力が実際に存在するわけですので、我々は今後、身を守る手段の確保を急ぎつつ、縄文文書の解析作業を進めていきたいと思います。……それではまた次回。ご視聴ありがとうございます」
いつものエンディングテーマが流れ、緊急ライブ動画が終了した。
ライブ配信後も着々と視聴者数が伸び、わずか三日で数百万となった。
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