2-3、

「ちと喉が乾いた。何か飲み物を持っっくり」


 倫輔が小声で傍らに呼びかけ、数秒後。――


 突然画面中央に、にゅうっ、と白い手袋の手が延びた。ペットボトルのコーラを握っている。


 倫輔はそれを受け取り、キャップを回してグイと一気に飲み干した。


 ――おい。今の手は女の子?

 ――多分、美女やぞ。全てを見通す魔眼持ちのオレには、判る。

 ――美女を出せ、美女! 世の全・男を代表して要求する!


 視聴者コメントが止まらない。そのコメント数たるや、普段の数倍はあろうかという有様だ。


「もう……。あたし、このライブに出る気なかったのに」


 突如、画面にどアップとなる美女。


 ボンッ、キュッ、ボンのバニーガール姿だった。言うまでもなく、彼ら三人の悪友、笙歌である。


 立ったままカメラを横切ったせいで、その……セクシーなあの部分の、いわゆる切れ込み具合だとかその他あれこれが大映しとなった。


 笙歌は、おのれの悩ましき肢体を晒すかのように悠々とフレームインした後、金作の傍らに座る。


「こいつを出演させる気、なかったんだけどな……」


 苦い顔の、金作。倫輔と彰善も、苦笑。


「あたしだって、出る気なかったんだけど」


 イヤそうな表情の、笙歌。


 早速、怒涛のコメントが雲霞の如く、流れた。


 ――ウソつけ。バニーガール・コスとか、ハナっから出る気マンマンやんか!

 ――美女だけ出とけばええぞ。ヤロー三人は要らん。

 ――目の保養、目の保養♪ タマキンさん、一生ついて行きます。




 この動画がアップされた四日後には、視聴者数ン百万、チャンネル登録数も一〇〇倍に跳ね上がった。

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