第5話 Asahi と KIRIN

今回のキャップはとくに捻りがない。Asahiとの社名ロゴがあるのみで、上部には小さなフォントで ←あける とあるのみである。正直、何を語っていいものか悩むのだが、実はこういうシンプルさこそ、煩雑で些末な情報を限りなくゼロに近づけるまでのデザイナーの努力をあらわしているのではないだろうか。キャラ絵を載せる、フォントをもっと凝ったものにする、「あける」ヘルプガイドを乗せる、社名ロゴを小さくして、キャッチコピーなどを載せる、等々。それらが今回のキャップでは、社名ロゴと「あける」のみなのである。なぜ、省いたのであろうか。それを考えるのは我々末端の人間であり、デザイナーのお仕事ではない。それに、あろうことかKIRINにいたってはKIRINと大文字のでかいフォントが中央にどーんとあるのみだ。いったいどんな飲み物が想像できうるのだろうか。


これはあくまで僕の推論である。それが正しいならば、つまり、量産型デザインとすることで、あえてドリンク本体へ注視させているのである。おっ、社名があるな、どんな飲み物なのかな? と、ボトルを手にした人間は味覚が刺激されるはずだ。それにより、キャップを見ることによるバイアスが無くなり、新鮮な気持ちでドリンクと出会えるのである。シンプルなキャップにはそういうギミックが施されているといっても過言ではない。


人生は短く、集めるキャップは多い。

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