第42話 相談。なぜ?
【まえがき】
話の流れ的に短くなっちゃったので、本日2話目。
こちら2話目ですので、順番を間違えないようお気をつけ下さいまし~。
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「研究活動は、簡単に言えば自分の職業をもっと上手く使おうと研究する活動のことよ」
「なるほど」
変な茶番を挟みつつも、改めて席に座り直してノワの説明を聞く。ネイリア先生とラン先生も言っていた研究活動についてだ。
「ただし、研究と一言に言ってもその方法が多種多様というのが問題点ね」
「多種多様なのが問題点? 良いことじゃないのか?」
「確かに自身の求める到達点に向けての選択肢が多いというのは良い事よ。けれど私達は入学3日目って事を忘れてないかしら?」
「3日……」
3日。そうだなまだ入学して全然日は経ってない。それが多種多様が問題になる事と何か関係があるのか?
いろんな選択肢を取れて凄いことだと思うんだけどな。だってこのスレイン王国最大最高の学園なら、教師も相当数在籍してるのだから、なんでも出来るんだぞ。……ん? 相当数?
「あっ、俺等先生達のこと全然知らないじゃん」
「その通りよ」
「あ~盲点だったな。先生の数が多くてなんでも好きな事を教えて貰える。なんて思ってたけど、教えてくれる先生自体を良く知らないんだから選びようがないんだな」
たくさんの選択肢があるのにその選択肢が何なのかを知らない。どうしようも無いじゃないか。
「そう。例えば剣を扱う職業……大剣使いとでもしましょうか。大剣使いのA君は大剣を主軸に置いた超攻撃型の研究をしたい。だから大剣使いで有名な先生の所に行きました。どうなると思うかしら?」
ノワ先生の講義が始まった。
ノワはこういう所があるんだ。結構楽しそうに講義を始めるんだが、俺がノワの考える答えからかけ離れて間違えると凄く失望される。結構怖いんだぞこれ。
「……普通に考えれば大剣の使い方をしっかり教えてくれるんじゃないか?」
「そう……そうね。ただ教えてくれるなら良かったのだけれど、その先生は大剣に頼りすぎない全身を活用した守備型の研究をしていたのよ。それならどうなるかしら?」
惜しい回答をすれば追加の情報を出して答えに辿り着けるようにしてくれる。しっかりと考えれば間違えることはない。
「同じ大剣を扱う職業で、大剣に関する研究だとしても、A君の求めている研究ができなくなる?」
「正解よ。しかも大剣という火力を担当する職業で、守備を意識した研究をするような人は大抵頑固なのよ。一度参加したらなかなか研究を辞めさせてくれないわ」
「うわぁ……それはなんとも悲惨だな」
ノワが多種多様が問題点と言う意味が分かった。
さっきのネイリア先生の言い方からして、今日中に誰かしら先生に頼んで研究を始めないといけないのだろう。だが入学3日目の俺達には情報が少なすぎて、多すぎる先生の中から適切な人を選ぶ時間がないんだ。
「どうすれば良いんだ……? 俺はたまたまラン先生っていう良いテイマーの先生と知り合いだから良いけど、他の人はそんな偶然なかなか起きないだろ。無理じゃん」
「そういう事よ。だから多種多様が問題なの」
……いや、もうどうしようもなくね? もう時間無いんだから詰んでるじゃん。
俺とノワが研究について語っていると、気づけば少し距離を開けて遠巻きにこちらの事を見ている人だかりが出来ていた。
数人というレベルではない。10人でも収まらない……いやクラスの半分くらい居ないかこれ?
「だからこうなるのよね……はぁ面倒だわ……ほら全員こっちに来なさい」
ノワが軽く手招きすると、クラスメイトが皆一様に破顔して駆け寄ってきた。どうやらお目当ては俺ではなくノワのようだ。
いったいどういうことだ? なぜクラスメイトがノワに群がるんだ。
「じゃあまずはキラニアさん。彼女とヴェイル以外は離れなさい」
ノワがそう言うとキラニアさんだけが俺とノワの近くに残り、それ以外のクラスメイトは離れていった。
そしてそれを確認したノワが、懐の魔法袋から一つの魔道具を取り出して、机上の俺等の真ん中に位置する場所に置いた。
あれは確か遮音結界の魔法具だったか……? 他の人に聞かれちゃいけないような話をするって事か。
「これでいいわ。ヴェイルはここに居ても良いわよね?」
「はい。ヴェイル君ってノワ様の特殊金券ですよね?」
「そうよ」
「あっそれって言って良いんだ?」
「これは隠すことでもないもの」
「……はいよ」
何とも含んだ言い方をするもんだな。言いませんよエンシャントテイマーって事は。
「じゃあ話を戻すわよ。キラニアさんの職業は?」
「私は『絶望純戦士』です」
ノワがキラニアさんに職業を聞くと、キラニアさんはなんの気兼ねもなく職業を言ってしまった。
こういう正確な情報って普通は隠しとくもんじゃないの!? 職業を知られるって弱点を知られる様なものだよ!?
「珍しいわね。私も聞いたことが無いわ」
「強い絶望を感じれば感じる程、身体能力全般が上昇するという職業です」
「そう……それは使い勝手に困るわね。そんな手頃に絶望を得られる訳でも無いでしょうし、誰が良いかしら……」
まぁでも、ここまでくれば俺にもノワの周囲に人が集まった理由が分かってくる。ノワが公爵家で人脈が国内でも最大レベルという事を考えれば明白だ。
「あ、この前のあの魔法陣で絶望の方はなんとかなりそうです。今でもあの光景は――」
――バギッ
急にキラニアさんが手を置いていた机にヒビが入った。
横長の机の真ん中から出来た放射状のヒビ。不注意で物をぶつけたりして出来る様な小さなヒビではなく、明らかに使用不可能一歩手前の大きさのヒビだ。
「あっごめんなさい! つい力が入っちゃって! 怪我は無いですか!?」
「大丈夫よ。それにしても凄い力ね。つい、でそれなら本気で力を入れれば相当な破壊力を生み出しそうね」
ノワが何事もなかったかのように職業の分析を再開した。
そりゃキラニアさんの目的もそこなのだろうから正しいとは思うのだが、もう少し動揺するだろ普通。なんで無表情で分析続けてるんだよ。
俺なんてさっきのキラニアさんの威圧感に驚いて何も言えなかったんだぞ。
『主様、あの子強いよ~』
『そうみたいだな。人って見かけによらないな』
あんな素朴で真面目そうな可愛い顔をしているのに、この破壊力を少しの気の緩みで出してしまうのだ。王立学園に入学できた人に油断して良い様な存在は居ないってことだな。
そう再認識させられた。
その後、俺の想像通りキラニアさんに適している先生をノワが紹介し、代わりばんこにクラスメイトに適している先生を紹介していた。
その過程でクラスメイトの職業を大量に知ってしまったのだが、なぜ俺を同席させたのだろうか。俺が全員の職業を知った所でなんの意味もないぞ?
「いざという時に使えるじゃない」
「いざって……?」
「いざという時はいざという時よ」
ノワの言ういざという時はそういう事なのだろうけれど、そうはなって欲しくはないと俺は思う。
まぁでももしそういう風になったとしたら、同じクラスで怖いのは誰だろうか。
キラニアさんのあの力とか、あとはミュード・エルノイア君やキキ・アイビュードさんも怖いと俺は思う。
はぁ……皆と仲良くしたいもんだなぁ……。
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