第25話 王立学園の意味。まじ?
入学式が終わって1時間後。よく分からない待機の時間は終了し、担任による学園生活の説明が始まった。
「あたしはネイリア・アーロウル。小さくて舐められがちだけど、26歳だし、舐めた奴はあたしの灰魔術でボコボコにするから覚悟してね」
この教室にある教卓は大きい。横幅もあるし高さもある。そして今話しているネイリア先生は自分で言っている通り小さい。と、いうことは必然的に教卓から身を乗り出すのが厳しいというわけで。
「先生ちっちゃくて可愛いっすね~!」
そしてウケを狙ったのか真正のやべぇ奴なのかは分からないが、馬鹿というのは何処にでも居るものなのだ。
で、自己紹介でも言っていたのだから当然のごとくチビいじりを先生が許容するわけも無いのだが、それにすら気づかないからこそ本物の馬鹿なのだろう。
「そんなガキが使う台を使わないといけないなんて大変じゃないっすか~? 俺が教師変わりますよ~! な~皆!」
先生が額に青筋を受かべているのにも関わらず馬鹿生徒Aが先生を煽り続け、そして先生がキレた。
「ちびちびうるさいんだよねー!!! 死ね! 『移ろいの灰燼』!」
先生の腕に魔力が集まり、灰色の粉が具現化する。それは灰燼という魔法名からして明らかに灰であり、灰独特の焦げ臭さのような埃っぽさを感じさせた。それにどうもあの灰は非常に熱そうだ。
その灰は塊をなして馬鹿生徒Aに突撃し、情け容赦無く馬鹿生徒Aの顔面を殴打した。
「いたっ! いてぇいでぇ! う、うわぁぁ!」
「だれがっチビだっ! これでも26だっ! どんだけ努力しても伸びないんだよっ!!」
もう先生ブチギレ。
自分から教えてくれた地雷は踏まないに限る。
数分ほど先生の灰攻撃と生徒の防御のやり取りを見届け、普通にボコボコにされた生徒が保健室に行ったことで、先生の話は再開された。
あれで普通に続くとか怖えよこの学園。
「えー少し取り乱した、ごめんなさい」
小さな体でペコリとネイリア先生が頭を下げた。
「じゃあ説明を再開するね。この学園は王立と名前がついている通り、王国が直接運営をしているよ。学園長は国王の古い友人だし、副学園長は第一王子その人だね」
つまり副学園長はアイファとミエイル様のお兄さんか。
「では、何故この学園は王立なのか。分かる人いる?」
ネイリア先生が早速授業のような形式で俺達に問いかけてきた。
何故王立なのか、か。普通に王国が主導して計画をねった教育機関だからとかじゃないのか?
「はい!」
「じゃあそこの紫色の髪の毛の……キラニア君」
「王国が計画を立てて学園を設立したから。ではないですか?」
キラニアさんが俺と同じ考えを言う。
「普通に考えればそうだな、だが違うんだよ。他にいない?」
だが違ったようだ。
しばらく先生が俺達を見渡すが、誰も手を挙げなかった。俺もそうだが普通に分からないのだろう。いや、ノワは分かってて言ってないだけな気がするな。アイファはまぁ王族だし知ってるだろう。
「そうか、勉強不足だね。アイファ君、答えを頼むね」
「うむ。それはこの学園に職業の力を高める魔法陣が敷設されているからだな」
「正解。流石は王族だね」
職業の力を高める魔法陣だって!? それって前代未聞じゃないか!?
職業の力を高めるには繰り返し使うか、危険を犯して魔物を討伐したりすることでゆっくりと成長するっていうのが通説じゃないか。それなのに無条件で力を高めることが出来るなんて……。それだけでこの学園に入学する意義があるってものだぞ。
俺の驚きを肯定するかのように、周囲の生徒達もざわざわと自身の混乱を周囲と共有していた。だがその混乱は思ったよりも小さかった。
もしかして入学式の時に言っていた女性の話ってこれか?
「静かに!」
ネイリア先生の一言で教室は静まり返った。
それもそうだ、さっき一人の生徒がボコボコにされるのを見ていたのだから、今更些細なことで先生に逆らおうとする奴なんていない。
「これは極一部の上位貴族なら機密情報も知っていることだし、そもそもこの学園を卒業した生徒なら誰もが知っていること。確かに学園に関係のない他者に口外しないことという緩い誓約はあるけど、調べようと思えば少しくらい情報は出てくるよね」
まぁ確かにそれはそうだな。
「と、いうことで明日から新入生は順番に魔法陣に向かい、自身の職業を高めることになるからね。私達7組は14時に魔法陣に向かうことになっているから、明日は13時にこの教室に集合するように。じゃあ、各自事前に受け取った荷物は既に寮に置いてあるから、今から配る学生証を受け取ったら、ここに貼ってある紙を見て自分の寮を確認するようにね。じゃあ解散だよ」
ネイリア先生は俺達に学生証を配ると教室をすぐに去り、みんなも寮を確認して各々自身の寮へと向かっていった。
俺も自分の寮が何処なのか確認しよう。
「ノワ、俺達も見に行こう」
「そうね」
「勿論私も一緒に行くぞ」
「何が勿論なのかしら」
隣りに座っているノワも誘い、自然とついてきたアイファと3人で寮の張り紙を見に行った。相変わらずノワとアイファが居ることでその紙に集まっていた人達も譲ってくれて、すぐに確認することが出来た。
【特寮】
最上位の寮であり、各学年優秀者30名が入寮することが出来る個室である。特寮には様々な設備が整っており、例を挙げるならば24時間利用可能の休息室や訓練室等がある。その他の設備や特権は入寮後に確認するように。
アイファ・ディ・スレイン(7組)
ノワ・ブルノイル(7組)
ヴェイル(7組)
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【上寮】
上位の寮であり、各学年優秀者170名が入寮することが出来る2人部屋である。上寮もある程度の設備が揃っており、特寮より質は劣るが何不自由ない生活を送ることが出来る。細かい内容やルールは入寮後に確認するように。
キラニア(7組)
グロウ(7組:取り消し)
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【下寮】
下位の寮であり、上位2つの寮に入れないものが入寮する事が出来る2~4人部屋である。下寮とはいっても、そこまで酷いものではない。上位2つに比べて劣るというだけで生活するには問題ない。入寮後に詳しく調べるように。
グロウ(7組:確定)
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寮は全部で3種類のようだった。それぞれの寮の説明やその他の制度も軽く書かれあった。
だが問題なのは、紙の一番下に書かれている内容だった。それを読んでみるとこの学園がいかに実力主義なのかが見て取れた。
『3ヶ月に1度寮入れ替えがある。その際に成績が低迷している者や逆に成績が向上した者は、寮の入れ替えが発生するため気を抜かないように』
「実力主義だな」
「そうね、まぁでも私には関係ないわね。負けるわけがないもの」
「その通りだな。私にも関係ないだろう」
「俺は……頑張るわ」
今回俺は運が良かった。学力試験はノワ主導で入学試験に出る内容を重点的に勉強した為、自分の実力で何とかなった。実力試験に関してはテイマーであるラン先生が居てくれたお陰だし、面接試験もラン先生が魔物を貸してくれたお陰だ。
それが無ければ俺は、入学は出来たかも知れないけれどこんなに上位の寮に入れたとは思えない。
明日の職業の力を高める魔法陣。それ次第ではこの寮の配置も大きく変動することになるだろう。
俺も絶対に力を手に入れなければならない。とにかく魔物をテイムできるように!
「早く行くわよヴェイル」
「あ、おう」
ノワとアイファと一緒に、これから俺が暮らすことになる寮へと向かった。
てか取り消し対応されてたグロウ君って、確か先生にチビ煽りしてた子だよね。
……地雷、踏まない、絶対。
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