第1章  卒業試験と護衛員⑦

 アベルは大柄だ。こっちに突進してくる。他の2人が見当たらない。アベルが戦斧を振るうのを後方に避けると、アベルの背後からアランが跳び出してきた。槍を持っている。アベルの背中を踏み台にしたらしい。


 間一髪、僕は避けれた。と思ったら、アベルの背後からアレクサンドルが跳んできた。矛を振るう。大剣で受け止めた。ランが突進してくる。一気に訓練場の端まで後退した。


 1対4、これは苦しい。 


 またアベルが戦斧を振るう。その1撃を避けながら僕が跳んだ。アベルの肩を踏み台にして、背後から跳んで来るアランを空中で止めた。着地の際にアレクサンドルの矛も薙ぎ払った。着地すると同時に僕はまた距離をとった。


 全く勝機が見えない。体力的にもキツイ。そんな中、ランが斬り込んできた。やはり受けるので精一杯だった。そこへアベルが突進してきた。上からアランとアレクサンドルが襲ってくる。


 僕は一太刀ずつ峰打ちを食らった。要するに4人分、4発くらった。僕は地に伏した。


 痛い。


「4名、下がれ」


 4人は下がった。


「次、シュウ、開始線へ」


 僕は立ち上がった。開始線へ。


「はじめ」


 一瞬のことだった。開始線から一気に距離を詰めて抜刀術で1撃をくらった。レベルが違う。何も出来なかった。


「シュウ、下がれ。最後は私だ」


 僕は立ち上がって、もう一度開始線へ。


「いくぞ」

「はい」


 僕は今度は自分から間合いに飛び込んだ。長槍とのカウンター狙いだったが失敗した。一瞬で腹を突かれた。僕はとうとう意識を失った。



 目が覚めた。ベッドの横に椅子があり、女性が4人座っていた。今日、剣を交えてはいないが護衛隊の制服を着ている。



「気がつきましたか?」


 3人の内の1人が声をかけてくれた。


「すみません、僕、訓練で倒れたんですよね?」

「そうですよ」

「僕の今日の任務は?」

「今日は訓練だけです」

「え、訓練、あの特訓はもう終わったんですか?」

「はい。終わりました。安心してください。このまま、ゆっくりしてくださいね。この部屋はあなたの部屋ですから」

「あなた達は?」

「私はユーリです」


 ユーリは髪が長くて黒かった。優しそうな顔立ちをしていた。


「私はアリスです」


アリスは金色の髪だった。童顔なのか、とても若く見える。かわいい。


「私はサラ」


サラは緑色の髪だった。控えめな美人だった。


「私はアンナ」


アンナは青い髪でクールな美人だった。この部隊には美人が多いらしい。


「皆さんとは、今日は対戦していませんね」

「私たちは戦闘よりも回復魔法の方が専門なのです」

「ああ、それで」

「今もレンさんに回復魔法を施しているんです」

「お世話になってしまって、すみません」

「いえいえ、私たちの仕事ですから」

「初日から恰好悪いところをお見せしましたね」

「いえ、健闘なさった方ですよ」

「そうなんですか?」

「ええ、みんなビックリしていましたよ」

「じゃあ、僕が倒れるのは予想通りだったんですね?」

「そうです」

「新入りには、ああいう洗礼があるんですか?」

「はい、そうです」

「僕だけイジメられているのかと思いましたよ」

「ウェイも、レイラもこの洗礼を受けています。今日のことは、明日には引きずらないようにしてくださいね。もう、終わったことですので。洗礼は終わりました」

「わかりました、明日から普通に任務を遂行します」

「では、私たちはこれで失礼します。明日、体調が悪かったら休んでもいいとリーさんが言っていましたよ」

「わかりました」

「では、おやすみなさい」

「はい」



 僕はもう一度寝た。すぐに熟睡した。とても疲れていた。


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