第1章 卒業試験と護衛員⑥
少しの間、どちらも仕掛けず対峙した。レイラの殺気が伝わってくる。訓練でどうしてここまで殺気をだせるのだろうか? レイラは冷たいポーカーフェイス。感情が読めない。というか、怒りの感情しか感じられない。だが、怒られる理由がわからない。そして、次の瞬間、レイラから仕掛けて来た。
一瞬で間を詰められた。僕は一瞬で後ろに跳んだ。間一髪。高速で詰められたから高速で下がっただけだが、レイラも僕と同じスピード剣士だということがわかった。だが、これくらいなら怖くない。レイラよりも、普段相手をしてきたライの方が速い。僕は、ライとずっと手合わせをして来たのだ。僕は自信を持った。
僕はしばらくレイラの連撃を防いだ。どうやらレイラはこのまま一気に決着をつけるつもりらしい。ならば、一度距離をとらないといけない。
僕は口から火炎を吹いた。これくらいの炎なら操れる。
今度はレイラが後方へ跳んだ。よし、距離をとることが出来た。今度は僕の方から間合いを詰めた。僕の大剣の連撃。女性の腕力では、まともに受け止められないくらい重い一撃のはずだ。だが、レイラは器用に受け流した。
「女性相手に炎の魔法を使ったな、髪の毛が焼けたらどうする?」
「そうならないように手加減しましたよ、先輩!」
「訓練とはいえ、手加減されるのは不愉快だ。2度と手加減などと言うなよ」
「はい、わかりました」
“捕らえた!”。僕は大剣をレイラの喉元に突きつけた。
はずだったが、レイラは空中に逃げた。そのまま僕の後ろに回った、やばい。今は前のめりになっている。体勢が良くない。僕は踏ん張った。
後ろを振り向くと同時にガード。レイラがまた攻勢に出た。再び連撃をしのがなければならない。また、距離をとりたくなる。
僕はまた火炎を吹いた。
また、距離をとることができた。
次に僕は、火炎玉をレイラに連発でお見舞いした。このくらいなら火も操れる。だが、案の定火炎玉は全てレイラに防がれた。それは想定内だ。
そこで僕は、風を操り砂塵をレイラにぶつけた。かまいたちは使えない。女性の肌を傷つけたくない。砂塵は目つぶし(目隠し)になるはずだ。
一気に間合いを詰め、レイラの懐に飛び込んだ僕は、レイラの喉元に剣を突きつけたが、レイラも僕の脇腹に剣を突きつけていた。
「双方それまで。今回は引き分けだ」
礼をして、しれーっと退場しようとしたら、またリーに呼び止められた。
「レン、どこへ行くんだ?」
「いやぁ、もう終わりかなぁと思いまして」
「何を言っている、まだまだだ。開始線に来い」
「はい……」
「次、ランは開始線へ」
薙刀をもった女性が開始線に立った。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ランは上品な雰囲気を漂わせた美人だった。武器は薙刀。こんなに上品な女性が武人として戦うのか? 僕は、ランの雰囲気から戦闘というワードが連想できなかった。勿論、僕はランを侮ったわけではないが。
ランは薙刀を構えた。
「はじめ」
まず、僕は薙刀の間合いから少し遠のいて様子を見た。
「はっ!」
ランが間合いを一気に詰めた。僕は大剣で一撃を止めた。一撃が重い。スピードも充分。強敵だ。女性とは思えない。学校に女子もいたが、ランのようにスピードも一撃の威力もある武人はいなかった。間違いなく傑物だ。
気が付いたら僕は防戦一方になっていた。僕はいったん後方に跳びノーガードで待った。ランが斬り込んでくる。
ここだ!
僕も踏み込んだ。カウンター狙い。僕もランもどちらも外した。もう一度距離をとった。
「アベル、アラン、アレクサンドル、入れ」
3人が入って来た。
「どういうことですか?」
僕は言った。
「1対1とは言っていない、今度は乱戦を想定して戦ってもらう」
この訓練の目的は何なんだろう? 単に僕を叩きのめしたいだけなのだろうか? 僕は、終わらない訓練に恐怖を抱き始めた。
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