第1章 卒業試験と護衛員⑤
入隊の日を迎えた。
王宮の入口まで行くと、また侍女らしき女性達が部屋まで案内してくれた。ただの侍女にしては、相変わらず美し過ぎる。だが、その侍女達より遙かに美しいのがソフィアだ。ソフィアの美しさが恐ろしい。多分、僕はソフィア以上の美人を一生見ることは無いだろう。そう思えてならない。
「レン様をお連れしました」
「どうぞ中へ」
「失礼します」
僕は、部屋の中央あたりまで移動して言った。
「ノア戦士高等専門学校を卒業したレンです。本日からソフィア王女様の護衛隊に入隊させていただきます。よろしくお願いいたします」
「ようこそレン。今日からよろしくお願いしますね。期待しています」
ソフィアが微笑んだ。こんな眩しい微笑み、僕は初めて見る。ソフィアの護衛員を選んで良かった。僕は、心の底から“この女性を守りたい!”と思えた。
「私はリー。護衛隊長を任されている。レン、今日からよろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「うむ、ソフィア様の護衛隊の制服、よく似合っているぞ」
「ありがとうございます」
僕は初めてソフィア護衛隊の制服を着ていた。黒地に赤いアクセントのある隊服だった。兜ではなく帽子だった。腰には自分の大剣を下げている。制服がカッコ良すぎて恐縮してしまう。ロウやシローなら、どんな服でも着こなすのだろうが、地味な僕が着たら滑稽なのではないか? 不安だった。早速、リーに制服姿をいじられたので、赤面してしまいそうだ。
「レンには今日は特別な鍛錬をしてもらう」
リーはソフィアの横で控えていた。目つきが鋭い。学校の教官よりも鋭い目をしていた。正直、僕の中で苦手意識が芽生えた。ぶっちゃけ、こんな上司は怖い。
「はい、なんなりとお申し付けください」
一応、模範解答をしてみた。
「では、外の稽古場へ移動する」
嫌な予感がした。
ソフィアと13人が稽古場とやらに移動した。
「では、レンと我々で稽古をする。レン、用意をしろ」
言われて、僕は大剣を抜いた。
「いつでもいいです」
「では、こちらからはまずウェイ。ウェイ、開始線へ」
女性剣士が開始線まで来た。身長は160センチちょっとオーバーだろうか? 髪が肩の上で揃えられている女性剣士が出て来た。髪は黒髪かと思ったが、よく見るとダークブラウンだった。まあまあカワイイ。柔和な顔立ちをしているので、僕はちょっとホッとした。良かった。怖くない人もいるようだ。
「よろしくお願いします」
と僕が言うと、
「よろしくお願いします」
と爽やかに答えてくれた。姿勢も良くて好感が持てる。どうやら見かけ通り良い人のようだ。僕は更にホッとした。
ウェイが抜刀した。細身の長剣だった。
「私も、いつでも構いません」
「では、構え」
と言われても僕は構えない。大剣を手にしたままダラリと腕を下ろしている。これが、僕流の構えなのだ。
「はじめ」
一瞬で辺りが霧に包まれた。霧に隠れて攻撃するのだろうか? どうやら、ウェイは霧を操れるようだ。なるほど、使い方によっては便利な能力だ。だが、魔法には相性がある。僕と霧の相性はいい。
僕は突風を吹かせた。僕は風なら多少は操れる。風によって、一瞬にして霧は晴れた。霧に隠れて迫っていたウェイの姿が丸見えになった。これでも、女性が相手なので手加減をしていた。僕は、かまいたちも扱える。これを喰らうと全身がズタズタに裂ける。だが、女性の肌を傷つけるわけにはいかない。
「風使いですか?」
「そうです」
僕は剣をウェイの喉元に突きつけていた。
「参った」
「勝負あり!勝者レン」
リーが言った。僕は勝ったらしい。
僕は特別鍛錬とやらの初戦を勝利で飾ることが出来た。開始線に戻って終わりの礼をして、僕は開始線から離れようとした。
だが、そこでリーに止められた。
「レン、どこへ行くんだ?」
「え、特別な鍛錬って、もう終わったのでは?」
「誰が、相手が1人だけだと言った?」
「ほな、まだ続くんですか?」
「当たり前だ。早く開始線に戻って来い」
「わかりました」
僕は開始線に戻った。
「次、レイラ」
「はい!」
レイラは赤い髪の毛を後ろで束ねている。身長は高い。170センチくらいだ。色黒で、彫りの深い美人なのだが目が鋭くて怖い。その点、美人ではないがウェイの方が愛嬌がある。レイラには愛嬌が無かった。まあ、魅力はあるのだが……。
「はじめ」
僕とレイラの試合が始まった。レイラは長剣を抜いている。
特別鍛錬とやらはいつまで続くのだろうか?
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