第12話:転生邪神、サイン本を手に入れる
部屋に入った先にあったのは、ヒュドラの死体と友人の部下だろう魔族とその人を脅す弟子二人。状況的に弟子がやったんだろうが、まじでどうしたらこうなるのだろうか?
「……えっと大丈夫かグレア達?」
「え、この状況で脅してる側心配するとかありますぅ!?」
「いや……なんかすまん、ツッコみ所が多すぎてさ」
「こいつ鬼畜ですぅ!」
「え、師匠の事悪く言った?」
「言ってないです! ――流石お二方の師匠ですねっていいましたぁ!」
無理あるぞそれ……と思ってしまったが、弟子二人はその二人はそれで満足そうにしている。一応改めて状況を整理してみようとしたのだが……なんか考えれば考えるほどに頭痛がして、何より多分瞬殺されたであろうヒュドラの死体が哀愁漂ってた。
「えっと、一応聞くんだがお前がこのダンジョン管理してる魔族で良いか?」
「え、あ、はい。一応管理した魔族です。えへへ、すいませんねこんな雑魚魔族が管理してて……数百年暖めてたボスも瞬殺されたゴミですがよろしくです」
「なあグレアにスタン、何したんだ?」
「ヒュドラ倒して師匠がどこにいるか聞いただけだよ?」
「俺はその手伝いしただけだな」
「あとで説教」
心底驚いたような顔をして互いの顔を見合わせ、どっちが悪いかを真面目に話し合う弟子二人。誰がこんな風に育てたんだ? と聞きたくなったが、どう足掻いても俺が育てたので何も言えなかった。
「……でだ。一応なんだが、これ俺達攻略した扱いで良いか?」
「ですね……すっごく嫌ですが、用意してたヒュドちゃん倒されたので。それで聞きたい、貴方の方はどうやってここまで来ました? 流石に正攻法ですよね? ね?」
「すまん――多分あんたなら、分かると思うが……ダンジョンの内部見てくれて」
「――え? まさか、いや――そんなわけ」
あいつから与えられたであろう魔法でダンジョンの内部を見ていく女魔族、そいつはダンジョンを全部見終えた段階で、諦めたような悟ったような表情を浮かべた。
「あのぅ、さっきよりダンジョン壊れてるんですが? ――何しました?」
「本当に悪いんだが壊して進んだ」
「……似たもの師弟ですねぇ、これアステリ様ガチで切れられますぅ! 責任取って下さい馬鹿師弟ぃ!」
俺の肩を掴んでぶんぶんと揺らしながらもそう言う女魔族。
不憫だと思うし、本当にまじで申し訳ないのだが……これも全部邪神を煽ったアレが悪いのでそこら辺は勘弁して欲しい。
「もう、帰って下さいぃ――減給確定やだぁ」
そうして奥の方に出る為の転移陣が用意される。
解析しやすかったので見てみれば、それはちゃん外に繋がる物だった。
「ほんと不憫――というか、姉さんいたんですね」
「うん、最高の取材が出来たよ我が妹」
「それはよかったですね――では依頼も完了というわけで、帰りますか」
ウィル先生も割とドライだなと思いつつ、用意され転移陣に乗って出て行くアマリエ姉妹。弟子二人も後に続き、俺へと手招きしている。
「えっと、詫びになるか分からんが……これあのアホに渡しといてくれ」
だけどここまで好き放題やった手前、何もしないのはやばいので詫びとして神殿から一品転移させた。
「え、これは?」
「あのアホが好きな酒、飲ませれば機嫌良くなるだろうから」
「――知り合いなんですか?」
「……一応? それと伝言たのむわ、本当に悪かったこんど飯奢るから許してくれ、あとエスタ脱出いえーいって」
「エスタって、え、は? 不滅の邪神の?」
「じゃ、そんなわけだから帰るわ。まじですまん、何か言われたら、今の連絡先渡しとくからそれ使って逃げてくれ」
それだけ伝えて転移陣に乗れば、そのまま俺は外に出された。
そして攻略者が全員外に出たことにより、ダンジョン自体にかかっている魔法が発動しダンジョンが消える。
このダンジョンを作った者は、クリアされたダンジョンを自分の手元に保存する癖がある。それでどうやって攻略したかを観賞するのが趣味なんだが……これ、あとで全部見られるんだよなぁ。
「あ、師匠も戻ってきた。今ね、報酬どうするか話し合ってたんだけど、師匠何か欲しい物ある?」
「決めてませんでしたので、ちゃんと馬鹿姉さん助けてくれたので報酬は多めでも大丈夫ですよ」
「あ、それならシャルさんの今書いてるやつの最新刊貰えるか? 元々それ買いに来たんだよな」
そう俺が言えば、それだけで良いのか? みたいな顔をされたが……俺としては元の目的がそれなので構わなかった。
「そうかい、じゃあ家に帰ろうか。そこで渡させて貰うよ」
「よっしゃ、ありがとなシャルさん」
……そうして、ちょっと長いダンジョン攻略の果て、俺はシャルロッテさんからサイン本を貰い王都へ帰還する事になったのだ。
[あとがき]
一章終わりです。
次回から二小に入りますのでどうか引き続きよろしくお願いします!
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