第3話:転生邪神、王城に立つ
馬車に揺られて数日、ようやく王都に着いた俺達は何故かこの国の女王と謁見することになった……。
豪華な造りの玉座の間、玉座の上には馬鹿強そうな巨龍の首が飾られていて眼前には金髪の女性がいて俺とグレアを見下ろしてる。他にも騎士が何人かいて、見知らぬ俺を警戒している――あれ、なんでこんな事になってるんだろう?
思い出せ、まじで思い出せ俺。
えっと確かぁ、王都ついて関所にいってグレアの顔パスで通されて?
それで気がつけば城の中で女王と謁見中? ……やべぇよ、まじで何も分からねぇよ。何だろうか、時間飛んだ? 時空魔法でも喰らったのか俺……。
とりあえず、俺は何すればいいんだ?
この無言で胃しか痛まない空間で俺は何をすれば。
「久しぶりですねリシア女王。何故私達は呼び出されたのでしょうか?」
そして何より真横のグレアが見たことない態度で目の前の女王と接しているのだ。
冷たく凜とした声。普段……いや、三年前の彼女からは考えられないその声音。
目は冷め氷の様な印象を抱かせてきて――なんというか犬っぽい彼女からは想像出来ない有り様だった。
「……ふふ貴殿が立ち寄ったと聞き、話したいと思っただけだ。して、その男が噂に聞くグレア殿の師匠か?」
「そうですね、私を育てくれたエスタ師匠です」
「そうか……これで身元は保証されたな? 騎士共、下がるが良い」
「ハッ! いくぞ貴様等」
そう言ってこの中でも一番強い気配を持つフルフェイスの兜を装備している騎士の声で数人の騎士達が下がっていく。その後も数秒ほど緊迫した空気と無言が続き、グレアがゆっくり口を開いた。
「びっくりしたよリシアちゃん。呼び出すのは良いけど、あんなに騎士がいてさ」
「悪いなグレアちゃん、妾もいらぬと言ったがあの頭でっかちが……」
「あー……まぁ、しょうが無いよね。昔からあぁだしあの馬鹿」
「グレア姉、師匠の前で俺を貶すのは止めて頂きたい」
急に砕けた態度になる両者。
そして、戻ってくるフルフェイスの男。
……よく聞けば聞き覚えのある声に、誰だろうと思っていると彼が兜を脱いで俺へと声をかけてきた。
兜を脱いで現れたのは、茶色い髪をしたヤバいくらいのイケメン。
見覚えのあるそいつは眩しいくらいの笑顔で俺を見る。
「貴方の二番弟子、トリスタン・バルバトス。また会えて心から嬉しく思います」
「あ、スタンか……あれ、お前って騎士になるって言って旅立った筈だよな?」
「えぇ、だからこの国で騎士となり。騎士団長まで最短で上り詰めました」
「……凄いな、お前」
いや、まじで凄い。
俺とグレアがやってきたこのアヴァンという国はかなりの戦力が集まる国であり、一般騎士一人で中位の魔物を狩るとされるほどの力を持っていると聞く、スタンが旅立ったのは二年前、たった二年でそんな国の騎士団長になるとはどんな功績を挙げたんだコイツ……。
「いえ、師匠には敵いません。俺が騎士団長になれたのは龍を狩ったからなのですが、あの程度の龍ならば師匠は一矢で狩っていたでしょう」
「狩ったって……あの龍か?」
「えぇ! あの飾られている龍は俺が仕留めました」
「頑張ったなスタン、うん……まじで」
死んでるから正確には分からないが、あれほどの大きさとならば上位……いや、特位と呼ばれる程の強さは持ってそうだし、普通に神代で暮らしていた龍と同レベルだろう。それを弓で倒すって何だ? 俺も一応出来るが、相当魔力込めた物じゃないと無理だぞ? そもそもどうやって硬いであろう鱗を貫通したんだよ。
疑問ばかり増えるが、こいつは昔から何かしたらすぐに俺に言ってくる奴だし、褒められたい一心でちゃんとやる奴だ。だからこの龍を狩ったのも本当だろうが……ちょっと師匠的には信じたくないなー。
弟子を信じないのは悪いが、なんか今の所グレアもスタンもバグってて怖いから。
そんな時だった。スタンと少し話していると、不機嫌そうなグレアが割って入ってくる。
「ちょっと馬鹿スタン、今日は私の番。仕事戻りなよ」
「グレア姉も王都までの道中散々師匠といたのだろう? ならば俺に譲るべきだ」
「まだ王都案内もしてないし、食べ歩きする予定なんだよね」
「そうか。ならばその任務は俺が受け持とう」
「姉に逆らう気? 年功序列って大事なんだよ?」
「そちらこそ、俺に挑む気か? これまで百五十戦戦ったが今五分であろう?」
「ふーん、じゃやろっか」
あれ、なんだろう急に胃がいたくなってきた。
なんでそんな二人はギスギスしてるんだい? 師匠的には喧嘩は止めて欲しいんだけど、あれ……無理そ? そういえばさ、この二人ってよく決闘してたけど、これいつもの流れか? ……いや、待とうか。今の二人の実力は知らないが、あの龍を狩ったスタンと勇者であるグレアの戦いは常識的にやばい。
だからきっと女王が止めてくれる……はず。
だってあれだぞ? 推定ヤバイ二人の決闘など見てるだけでも命が幾つあっても足りないし、既に胃がいたいのに弟子のやばさを実感するのはちょっと怖い。
だから頼むぞリシア女王、二人を止めてくれ。
「ほう、久しぶりに二人の決闘が見れるのか! ならば手配しようではないか!」
あばばばば、あばばばっばば、あばばばば(辞世の句)
なんで乗り気なのぉ?
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