第三章 御結転生人
第九話 試験樹ノ葉
「ヒメ、心して聞け! この者……
「武蔵うるさい! それ今どうでもいいから、汗拭いて豆餅に何でもいいから話しかけてあげて!」
武蔵は配信や酒場及び
中でも身分パネルに手を加え、内部情報を
豆餅の身分パネルに表示された
ヒメは配信や書庫及び公共地での勉学で、医療や薬学の知識を深めていた。
そしてやはり初見で
豆餅の傷口に
「豆餅、おぬしには
「っゼェな……耳元で……ガンガンよぉ……」
「武蔵! そっちのヒメの鞄から
武蔵に指示を出しながら、ヒメは
三カ月前のヒメは、里で生活していた頃の薬草知識すらも落ちこぼれていた自分が医学を修得できるか不安を抱えていた。
一週間前のヒメは、せっかく苦労して覚えた医療知識も武蔵が居れば活躍の機会があるまいと物足りなさを感じていた。
数日前のヒメは、
数分前のヒメは、活躍の場を喜ぶでもなく
何故なら、その女は
「
「クッソがよぉ……俺としたことが、情けねえ……」
「ヒメ、遅れて済まぬ! 鱗は用意した。他に
何度も練習した適切な判別方法を正確に実行するヒメの横で、苦虫を
ヒメはポーチから
出来れば不要であって欲しいとヒメは思った、だが念には念をである。
「ねえ武蔵、もし
「今まさに、だ!」
「なら斬って! 銀貨に変わる前に、瓶に斬った魔獣の血を入るだけ入れといて! 入れたらそれヒメの横に置いて!」
「承知!」
武蔵に新たな
「血清毒の可能性もナシ、よかった、武蔵ごめん血やっぱ要らない! もっかい豆餅の汗拭いてあげて! あとそうだ、豆餅の体を少し起こして頭を高い位置に!」
「うむ、
そこから先は早かった。
ヒメは
無事、処置は完了する。
*
「武蔵、ごめんね。それに、寝てるかもしれないけど豆餅も」
「何がだ、ヒメ。
町へ向かう夕暮れの獣道、ヒメは静かに謝り武蔵は同じトーンで静かに聞き返した。
「ヒメがさ、
「確かに今となっては
町に戻り
「でも、やっぱヒメもちょっと
「そうではない、拙者も思い
食い気味に武蔵が言葉を
命の大切さを再認識した武蔵と違い、
そんなヒメは豆餅にも武蔵にも、そして与謝野に対しても罪悪感が込み上げ胸が苦しくなる。
「いいよそんな、無理してヒメに合わせなくても」
「
瞬間、ヒメの心が軽くなった。
剣豪とて疲れる時がある、油断する時も、配信強者と肩を並べ
何故なら、その男は宮本武蔵だからである。
「ありがとね、武蔵」
「拙者の方こそ。解毒の
ヒメは胸が暖かくなった。
細かいことは気にしない二人なので与謝野晶子には〝半年〟と伝えたが、
短期
「ヒメのこと見直した?
「見直すは、違うな」
ヒメの心は暖かくなったり冷えたりと中々に忙しくなった。
熱帯魚ならショック死するほどの急激な温度変化かもしれない。
「そっか、まだダメかぁ」
「
大きな思い違いだった。
ヒメは自身を恥じ
しかし、その実とっくに同じ
「ム私誇」
「ムワタシホコ、とな? どういう意味だ?」
配信界隈における
それは〝ヒメ俺恥ずかしいよ〟であり、
見ている
時には笑われ親しみを込められながら、また別な日には
だが本当に
ヒメ俺誇らしいよ、の略である。
「なんでもないー、ム私誇」
「うむ、そうか」
おそらく宮本武蔵はその性格上、
よって、伝わらない。
だが、それでいいのだ。
胸を張りたいその気持ちを、そっと一方的に届けるだけで今のヒメは満足だった。
何故なら、
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