第二話 銃二十七倍段
彼は順応性が高かった。
荒野に出没する
多くの者は武蔵が取り引きを要求しても銀貨を出した途端に
しかし
変な町だが
何故なら、その男は宮本武蔵だからである。
「ダメだよ、町で振り回したら」
ある日、武蔵は
「長筒の類いか」
「え? なんて? とにかく、武器は収めてね」
武蔵は、
力量を測る
長筒、
剣道三倍段、という言葉が存在する。
武器所有の
そして槍や
全て、宮本武蔵の五輪書に記され伝わる内容となる。
倒せない相手ではないものの、
何より〝人間〟は死しても消えることもなければ、銀色の硬貨に変わることもない。
確認済みである。
つまり、この場での戦闘は完全に
「おぬしは
「ブギョーショ? ごめん、分からないなぁ」
少し前まで
今は荒野の行き倒れのことを思い出していた。
武蔵に対して、その身をもって〝人間の死体は消えぬ〟と
武蔵は荒野に降りた晩、行き倒れの男を
だが、予想は外れた。
翌朝も翌昼も、丸一日経過した翌夜も死体は残り、それを食い荒らす野犬の群れ。
無残な姿を見た武蔵は忍びなく思い、見ず知らずの者と言えどもきちんと穴を掘って
呼びかけてくる
「お兄さん、大型持って歩くなら一回パネル見せてもらえる?」
「ぱねる……とな?」
職務質問、いわゆる
この世界における〝国〟が制定した銃刀法にも似た
何故なら、その男は宮本武蔵だからである。
「ないってことは、んー、反応的に〝来たばっかり〟かい?」
「
武蔵特有の理解力の高さが
目の前の
「ならさ、
「うむ」
付いて行った所で取って食われるようなことも無し、
「登録課、三十番でお待ちの
「ムサシさん、これは読める?」
「ここが、分からぬ」
行きしなに武蔵は
男から手渡されたレシート状の感熱紙、上部に記載された待機番号という漢字四文字の意味までは分かれど真下のアラビア数字を理解することは武蔵には不可能である。
「そっか……まあ確かに古いもんね、身なり」
「うむ」
アラビア数字を認識できない年代からの転生者が通される特別案内窓口へ、武蔵は連れて行かれる。
「後は、係の人が教えてくれるはずだよ」
「かたじけない」
武蔵は椅子に座り、
アクリルパネルの隙間から小太りな中年男が、
「ちょっとね、じっとしてくださいね」
「承知した」
動くなという指示で落ち着かない気持ちになりつつ、目の前の中年から殺気は感じなかったことから武蔵はおとなしく言葉に従った。
何故なら、その男は宮本武蔵だからである。
中年が構える機械から幅一ミリ、長さ数十センチメートルの横長レーザー光が照射された。
中年は武蔵の頭頂部から腰までに光を当て、再び静かに頭頂部まで戻す動作を計三
「じゃ、最後にこれ。それと、説明書どうぞ」
「
それは、宮本武蔵。
成長した彼が自ら選び、決め、使い続けた
「これは
週刊少年誌一冊分の厚みと大きさを持つ身分パネル説明書を突き返し、武蔵は案内窓口を後にした。
例えるなら、彼が令和の時代を生きたとしても電化製品の
ゲームの
何故なら、その男は宮本武蔵だからである。
入り口に向かう途中、
数字を振り分け、確定ボタンを指先でタップ。
去り
「あのさ、アンタ……
武蔵は出口で待ち構える少女に声をかけられた。
振り返った武蔵は返事もせずに顔を
グラディエーターサンダルとも呼ばれ実在する、指出しの編み靴。
薄く軽やかな衣服に
長く尖った耳と明るい黄緑色の毛髪。
少女は、
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