色眼鏡なんていらない

春川 麗桜元いくら 猫部所属

心の色眼鏡をはずせ

突然だが、私には好きな人がいる。いつも優しくて気が合う男子。そして今日の放課後、屋上でその男子に告白をしようと思う。だけど、もし断られたらどうしようと思ってしまい、気が滅入ってしまう。


「ってわけで、相談しにきたよ~葵!」

「神奈……なんで私なんだよ」


 葵は私の親友でこんなこと言いながらいつも相談に乗ってくれる優しいやつだ。


「まあいいじゃん」

「はあ。で、その男子の名前は?」

「和泉君っていうの」

「あぁ。あのLGBTQの人ね」

「ん?なにそれ」

「知らないの? ……まあ、あえて意味は言わないでおくわ。ただ、告白をするときは心の色眼鏡を外しておくようにね」


 何を言ってるのかさっぱりわからない。


「ちょっと。もっとまじめに聞いてよ。さっきから意味の分からないこと言ってさ」

「告白すればわかることよ、まあ今言えることとすれば、私は今、あんたを試してるってことだけ」

「それってどういう……」

「ほら、行った行った。約束の時間はもうすぐだよ」

「あ、そうだった。結局何も相談に乗ってくれなかったけど……行ってくる!」

「うん、さっきの言葉を忘れないように!」


 色眼鏡をはずせねぇ。一体何のことだろうな。



☆☆☆

 

 私が屋上につくと、そこには和泉君がいた。


「ごめん。待たせちゃったかな?」

「いや、私もさっき来たばっかりだよ。っで、話って何?」

「あの……その……えっと……す、好きです! 付き合ってください!」


やった! 言えた! あとは、和泉君が……


「ごめんなさい。私、LGBTQのトランスジェンダーっていう障害なの……」

「え?LGBTQって葵が言ってたやつ」

「わかりやすく言うと、性同一性障害だね」

「だから一人称が私だったり、私との話が合ってたのね……」

「うん。だから、ごめんね?」

「嫌……そんなの嫌!私が初めて好きになれた人なのに!あんまりだよ」


 私は目から大粒の涙が出る。せっかく好きになれた人の心が女性だったなんて……


「はあ、助言してやったのにこれか……だから色眼鏡をはずせって言ったわよね。」


 後ろから、葵の声がした


「葵!どうしてLGBTQのことを教えてくれなかったの!」

「そんなことはどうでもいい。早く和泉君に謝りなさい。じゃないと、私たちは親友ではいられなくなってしまうわ」

「なんでなのよ!」

「その障害は、自分がなろうと思ってなっているわけではないのに人から差別され、区別される。神奈、あんたがもし和泉くんと同じ障害になって同じようなことをされたらどう思う?」

「それは……悲しいと思う」

「そんな悲しいことを神奈はやっているってことよ」


 私ははっとした。何てことをやってしまったのかと。後悔してもしきれない。


「和泉君! 本当にごめんなさい! 私は和泉君の生き方を否定してしまった。」

「いや、そんなに謝らなくていいよ。だから、まだ友達でいようよ! 話も合うだろうしさ!」

「……うん!」




『心の色眼鏡をはずせ』その言葉は、一生忘れることはない。




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