第4話 ゼッタイツゼツメイ

 さて、全く勝手のわからない住宅街に放り出されたおれ。どうやって帰ろうか…ッ!?

スパパパパパパッ!!!!突如、大量のパンツが飛来しおれを八つ裂きにせんとする。

「やべ、何式だっけ…なんちゃらほにゃ式!"タイツバイツ"!!」

予備タイツが夕闇(いつの間に夜に!?)を疾駆しぱんつを弾き飛ばす。弾き飛ばされたパンツたちが周囲の塀に突き刺さる。なんて威力と鋭さだ!?ぱんつと呼ぶには厳つい男物のブリーフたちが冷凍でもしたかのようにカッチコチの平らな刃となっている。

「ふっ、まあその程度は対応してもらわねばな。なかなかやるではないかッ!?」

後ろから声がし、振り向きもせずにタイツ捕縛。こいつがパンツ手裏剣の下手人か。情報を聞き出さなくてはいかん、めんどい。むさいし。

「さっさとなんで襲ったか、その他諸々良い感じに説明しろ。」

グイッと胸倉を引き寄せてメンチを切る。どうだ怖いだろ。恐る恐るといった風に男が口を開く。

「貴様…本当にそれで良いのか。タイツがぱんつよりも優れていると言うのか。絶対領域を隠して!ふとももの眩さから目を逸らして!それでいいというのか!お姉さんも少女もむちむちもスレンダーも素晴らしいのがふとももだろォ!太いからふともも?笑わせるな!!ふとももは全て素晴らしい!総じてふともも最高!ちがう!ぱんつの方がタイツより良いだろ!!!」

なっ!?グハッ…。今の説得、いや、布教が俺に効いた…?うっかり力が抜け束縛を解いてしまう。

「ハッハー!思い当たる節があったようだな!甘い!!!甘すぎる!!!!"甘美なるぱんつの乱舞"(すうぃーとぱんつだんす)!!!!!」

ドゴドゴドゴォ!と布製品にあるまじき音を立て、全く甘美でない男物のゴツいぱんつが俺の身体を打ち据える。回避もままならず、反論も思い付かない。タイツもしなしなの布に戻ってしまった。このままではやられてしまう、だが、俺は本当にタイツを愛していたのだろうか…

「ほらほらァ!大人しく負けを認めて!てめぇの実家にタイツプロパガンダをやめるよう言いやがれ!それで楽になれるぜ!今なら俺の『厳選☆ふとももキャライラスト&写真集♡』も付けてやらぁ!露出の多さに目を見開くことになるだろうなぁ!!!!!」

身体と精神に負荷が……あ"?お前今何つった。俺の脳内に風呂上がり、「きゃ~おにいちゃんのえっち~」と言いながらタオルで身体を隠そうとする妹、そのタオルの隙間から覗く麗しきふともも。制服に着替える最中、タイツを履いている彼女のチラリと覗くふともも。それだけじゃない、テレビの向こう。深夜アニメのヒロイン達のチラリズム。此処に我、真理を得たり!!!!!

 ドッ!!!!!俺から吹き荒ぶ圧によりぱんつだんすが弾かれる。腕には力が凝集してゆき、タイツが再び芯のある刀身へと変じる。

「全見せすれば良い訳じゃねェ、露出が正義なんかじゃねェ!僅かに覗く深淵が、覗き込む俺達をその小宇宙へと導いていくんだよォ!!!!!!!!!チラ見せ♡の美を学んでこいよ三下、引き返しやがれェ!!!!!」

「ぐわぁ!?!?inbfぱんつ団にwq栄光あれー!!」

タイツ剣の側面が強かにぱんつ怪人を捉え、はるか彼方にぶっ飛ばす。地平線から日が昇り、新たな1日が次なる高めへと昇ったおれを祝福する。

「タイツでシルエットが強調されたふとももが最高に、決まってんだろ。」

男の消えていった方向に背を向け歩き出す。が、数歩でその歩みが止められることとなる。

「……尋問し忘れた、あ、しかもどうやって帰れば良いんだろ」

一匹狼の哀しき遠吠えが、小さな街に朝を告げた―

「誰だいアンタ!さっきからうるさいよ!」

「ごめんなさい!!!」

急いでこの場を離れようと駆け出す。と、石に躓き身体が傾いて………―

***

―あの馬鹿野郎、散々な目に遭わせやがって…次はタダじゃおかないんだからっ!!!!タイツなんかより、ぱんつの方が素晴らしいって、刻み込んでやるんだからぁあぁぁあ!!!!

目が覚め、己の敗北を再認した私の叫びが朝の気持ちの良い晴天の下に響き渡る。次の作戦を―

「さっきからなんだい!だからうるさいって言ってんでしょーが!!!」

「すすす、すみません!!!」

…私の進む道は、険しい茨の道らしい…―

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