第21話 臨時役員②
翌日、俺は登校して教室へ行くと秋絵を見付けて声を掛けた。
「おはよう~」
「………」
「秋絵?」
「………」
「秋絵さん?」
「…あっ、つー君おはよう」
「朝から何をボーっとしてんだよ」
「んっ、大丈夫。で、何かな?」
「新垣さんから生徒会広報の手伝い、頼まれたって?」
「うん。つー君が受けたって聴いたから…」
「はぁ?俺は渋っていたら秋絵は決まったからって言われたぞっ!?…あいつ、俺たちを嵌めたなっ!こうなったら当日はバックレたろうかな!」
「でも、一度受けたら責任持ってやるのがつー君だよね?」
「ぐぬぬぬ…だいたい、お前は嫌じゃないのかよ?あんな噂流れた後で?」
「ううん、一緒に居る時間が増えるなら良いかなと…」
「はぁ?」
「何でもない。任された以上はしっかりやらないとね。こんな可愛い美少女と居られるんだから♪」
「自分で言うな!ったく。じゃあ前日までには生徒会で機材の確認するが、当日はデータを新垣さんに渡すとか色々と動いてもらうからな。頼むぞ」
「は~い」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
体育祭の前々日、新垣さんから「打ち合わせをするので放課後、生徒会室に来てください」と言われ秋絵と二人で生徒会室へと向かい「失礼します」と言って部屋に入ると、数人の生徒が集まっていたんだけど…あの中野先輩も居る!?
「あれっ?先輩!」
「よぉ、2年生はお前たちか」
「えぇ、同じクラスの生徒会役員に嵌められまして…」
「ははは、俺も似た様なもんだよ。でも彼女と一緒なら良いじゃねぇか」
「違いますよ!秋…那須さんは単なる幼馴染みっすから」
「ふ~ん。ま、そういう事にしておくよ」
「先輩、その意味有りげな顔は勘弁して下さいよ」
「はははっ」
そんな話をしていると、奥の会長席に居た生徒会長が「じゃあそろそろ、打ち合わせを行うか、その前に各自簡単に自己紹介をしてもらおうか」と言い、各自がテーブル前の席に着く。
「先ずは私から。生徒会長を務めている松木 和夫だ。今回の体育祭に際して協力を感謝する。本来、と言うか前回の体育祭までは写真部が行っていたんだが、昨年度の3年生が卒業すると部員がゼロになってしまい、部が休部になってしまった為に今回は写真に関して詳しそうな人を生徒会でピックアップしてお願いした次第だ。後は広報担当の新垣さんからお願いする」
「はい、2年2組の新垣 由実です。今回は写真撮影と補助を受けて頂きありがとうございます。細かい事は後程、説明しますがよろしくお願いします」
「1年3組の田中
「同じく1年3組の石橋
「2年2組の上野 翼です。普段は列車、所謂撮り鉄って事で自分も人物は自信無いですが、よろしくお願いします」
「同じく2年2組の那須 秋絵です。私も写真の事は詳しくないですが、よろしくお願いいたします」
「3年1組の中野 真一っす。男子で補助は俺だけみたいだけど、手伝い出来る事は何でも言ってくれ」
「3年4組の三沢
「ばっ、ばかっ!麗奈、余計な事を言うなよっ!」
「中野先輩、顔が赤いっすよ?」
「うっさい!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「と言う事で、田中君たちは入場門側を中心に東側半分、三沢先輩たちは退場門側を中心に西側半分、上野君たちは本部席を中心に動ける範囲は自由にお願いします」
「「「分かりました」」」」
「質問だけど、撮影担当が出場する時は?」
「基本的には上野君が田中君か三沢先輩の代わりに入ってください。上野君が出場する時はお二人がカバー出来る範囲でお願いします」
「あと、俺が借り受けるカメラを確認したいんだが」
「それも在ったわね。じゃあ打ち合わせはこの辺りでって事で」
打ち合わせが終わると俺と秋絵以外は「明後日はよろしく~」と言いながら帰り、俺は新垣さんと共に生徒会室の隣に在る編集室に行き鍵の掛かったロッカーからカメラを取り出した。
「え~と、これはニ●ンのZ6か。俺のカメラと同じメーカーだけどレンズマウントが違うんだよなぁ…あ、マウントアダプターも一緒に入っているから自分の交換レンズが使えるな」
「どう?扱えそう?」
「何とかなりそうだ。幸いに取説も一緒だし、今日明日と取説を読んで当日には差し支えない程度にはする」
「それじゃあ、お願いします」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その帰り道、駅に向かって秋絵と二人で歩いていた。よく考えたら今までは晃一や雪子が一緒だったから秋絵と二人だけって高校に入ってからは初めてだ。
「さっきの中野先輩、真っ赤だったな」
「あたしも見てて笑いを堪えるのに必死だったわよ」
「あの二人って付き合っているのかな?」
「中野先輩は『好き好きオーラ』が駄々漏れしていたけど、三沢先輩もまんざらでは無いみたいに見えたわね」
「そっかぁ。田中君と石橋さんも良い雰囲気だったしな」
「あの二人は付き合っているって噂を聴いたわよ。まぁ噂は噂だけどね」
「ふ~ん」
「しっかし、つー君も
「何で?」
「べっつに~」
そうして普通電車に乗って秋絵は俺より1駅手前で「じゃあ、また明日ね!」「お疲れ、明日な!」と言って別れ、俺は帰宅してからカメラの取説を読み込んだのだった。
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