第18話 あたしの想い③(秋絵視点)

 5年生に上がる時、再びクラス替えが有ったけど今度も三人、同じクラスになった。でも翼君は少しずつ身長が伸びていたのにあたしはそれ程は伸びず、席が隣同士になる事は無く身長順に並んでも少し離れる様になった。そしてそのまま6年生に進級した夏休み、林間学校では三人は同じ班になり飯盒炊飯やキャンプファイアなんかを楽しんだのだけど、ハイキングの日にそれは起きたんだ。


 あたしは6年生の始め頃に「女の子の日」が来る様になっていたんだけど、それがよりによって2泊3日の林間学校の中日に来てしまった。朝からかなりお腹が痛くて朝食の時にも殆んど食べられずにいたら、雪子ちゃんが「大丈夫?保健の先生を呼ぼうか?」と言ってくれた。あたしは「何とか保健室までは行けそうだから」と言うと雪子ちゃんは「じゃあ担任の先生に言ってくる」と先生に伝えてくれて、あたしと雪子ちゃんで保健室に向かったんだけど途中でどうにも動けなくなってしまった。その時、後ろから「あれっ?秋絵ちゃんと雪子ちゃん、どうしたの?」と言う男の子の声…早めに朝食が終わって部屋へ戻る途中の翼君だった。


「秋絵ちゃんがお腹痛くて動けなくなっちゃったの」

「えぇっ?じゃあ先生呼んで来ようかっ?」

「うぅん、少し休めば大丈夫だから…」

「でも…じゃあ秋絵ちゃん、乗って!」

 そう翼君は言うとあたしの前でしゃがみ、両手を拡げて背中を向けた。

「えっ?翼君大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、秋絵ちゃんくらいなら」

「じゃあ…」

 そのままあたしは翼君に背負われて保健室に行き、静かにベッドの上に座らせてくれた。そして翼君は「じゃあ保健の先生、お願いします。僕は先生に雪子ちゃんは秋絵ちゃんに付き添っているって伝えるからね~」と言って保健室を出て行った。

 その時、あたしは(翼君、あたしの事を…ううん、翼君は誰にでも同じ様に接してくれる。あたしと雪子ちゃんが困っていたからだよね。でも、あたしは翼君の事を………好きなのに)と、痛いお腹を抱えながら考えていた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そんな事が有り三学期も終盤に差し掛かり卒業式も近付いた頃、あたし達は中学校への進学の話をしていた時だった。あたし達の小学校からは私立校へ進学する人以外は二つの中学校へ進学するのが普通で、あたしと雪子ちゃんは当然ながら同じ中学校へ進学するのだけれど、翼君も学区域は同じなので同じ中学校だと思っていた。ところが…

「僕、春休み中に引っ越すんだ」

「えっ?何処か遠くなの?」

「ううん、今の所からは200mくらいの所。バス通りの向こう側だよ」

「えっ、それって…」

「うん、二人は二中だけど、僕は五中なんだ」

 そう、そのバス通りが学区域の境界線であたし達は別々の中学校になってしまうのだった。そして迎えた卒業式の日、最後に三人並んで記念写真を撮った後、翼君はこう言った…


「じゃあ、



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 あたしと雪子ちゃんは同じ中学校へと進学した。同じ小学校から来た人も居たけど、半数以上の人は他の小学校から来た人達だった。それでも雪子ちゃんとは同じクラスになって少しだけ安心したの。でも…(翼君も一緒だったら…)と寂しく思っていたんだけど或る日、一人の女の子が気になった。その子はあたし達とは別の小学校から来た子だったけど、その子と同じ小学校から来た人達とは最低限の会話しかしないで一人で居る事が多い子、白河 望ちゃんだった。


「白河さん…っていったっけ?良かったらお話しよ?」


 あたし達はそう声を掛けると初めは「えっ?」って顔をしていたけど、あたしは何故か(この子、あたしと似ている)と感じた。背格好こそ殆んど変わらない小柄な身体だけど、彼女は少し引っ込み思案な処があってあたしとは正反対。それでも或る日、『友達』の話をした時だった。


「あたしね、1年生から6年生までずっと同じクラスの男の子が居たの」

「男の子?」

「うん。雪ちゃんも一緒だったけど、その男の子がいつも、優しい笑顔で助けてくれたり、寄り添ってくれたりしたの」

「うんうん、解るなぁ。あたしにも幼稚園3年間、同じクラスの男の子が居たから」

「でも…その子とは中学校が別々になっちゃって少し寂しかったんだ」

「あたしも同じ。やっぱりその子と小学校が別で中学校でも再会出来なかったんだ」

「そっかぁ。望ちゃんはその男の子、好きだったの?」

「う~ん、今考えると初恋だったんだろうなぁ。秋絵ちゃんは?」

「あたしもそれが初恋だったと思うんだ」

「何だかあたし達、似ているわね」

「そうね。望ちゃんもその男の子にまた逢えると良いね」

「秋絵ちゃんもね!」


 それから三人は一緒に居る事が多くなった。あたしは雪ちゃんの他は初めて仲良しな女の子が出来て嬉しかったし、望ちゃんもあたし達と仲良くなって嬉しそうだった。2年生の林間学校も3年生の修学旅行も、あたし達は常に一緒に居てその時は翼君が居ない寂しさを忘れられた。


 高校進学の時、あたしと雪ちゃんは普通科の北川高校へ進学したのだけど、望ちゃんは北高の近くの北川商業高校へ進学する事になった。中学校の卒業式の日、あたしと雪ちゃんは「高校は別々だけど、あたし達は親友だもんね。一生の付き合いだよ!」と言うと望ちゃんも「うん、離れても親友だよ!」と言ってくれて中学校を卒業したの。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


作者より

秋絵ちゃん視点も望ちゃん視点と同じ3回で纏めようとしたのですが…小学校時代の話が長くなってしまい纏まりませんでした。なのでもう1回、秋絵ちゃん視点が続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る