第15話 あたしの想い③(望視点)

「ホントにつー君?」

「望お姉ちゃん!逢いたかったよ~」

「懐かしいなぁ…何年振りだ?確か幼稚園の卒園式以来だから10年、正確には11年か!」

 あたしとつー君、光ちゃんは懐かしさと嬉しさで喜び合っていたんだけど…秋川君って男の子が「えぇっと…3人って知り合いだったか?」と訊いて来て、つー君と光ちゃんが幼稚園の時の関係を話した。だけどその時、あたしは別の事を考え始めていた。

(秋ちゃん、動揺しているんじゃないかしら…)

 あたしは隣に座る秋ちゃんを見ると、軽くつー君を睨みながら「つー君が代金要らないなら良いんですけど!」と明かに動揺を隠す様に言っている…そりゃそうよね、これがあたしと秋ちゃんの立場が反対だったらあたしでも動揺すると思うし。でも、その後は二人とも平静を装って6人でお喋りしてコーヒーショップから帰る事になり、お店の前で秋川君と別れ5人で電車に乗ってつー君と光ちゃんが先に降りる時、二人は手を振って別れた。


 あたし達が降りる駅は1駅先なので三人で乗っていたのだけど…三人共に一言も言わずにいた。そして最寄駅の改札口で別れる時に秋ちゃんは元気なく「…じゃあね」と家に向かい、雪ちゃんは「望ちゃん、あまり気にしないでね。秋絵なら大丈夫だと思うから」「うん、あたしもはしゃぎ過ぎたわ、ごめんね」「うん大丈夫。望ちゃん、またね!」と言ってあたしも家に向かった。


 その夜、つー君からメッセージが来て通話でお話をした。したんだけど…やっぱり別れ際の秋ちゃんの顔が気になった。秋ちゃんはつー君が秋ちゃんの想いに気付いていないって言っていたけど、つー君に訊いたら「秋絵は」と言って今は誰とも付き合っていないと言う。一瞬、それならあたしでも、と思って言葉になりかかったけど何とか誤魔化して通話は終わらせた。


(秋ちゃん、大丈夫かな)

(まさか秋ちゃんの初恋にして今も想い人がつー君だなんて…)

(つー君はあたしの事をどう思っているのかな、秋ちゃんと同じ様に幼馴染みの一人なのかなぁ)

(毎日逢う、秋ちゃんの想いに気付かないつー君があたしの想いに気付いてくれるのかな)

(でも、この事で秋ちゃんや雪ちゃんとの関係を壊したくない!)

 ベッドに入って横になってもそんな事が頭の中を駆け巡り、なかなか寝付けなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


作者より

これで望ちゃんの胸中は一段落です。次回からは秋絵ちゃんの胸中になります。

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