第10話 原因は…
「私が原因かも…」
雪子がそう言うと俺は何が何だか判らずに「は?」と声が出てしまった。
「昨日の夜、秋絵とライムで翼君たちがしてくれた事をやりとりしていたの。二人とも読書しながらとか勉強しながらだったから通話じゃなくてメッセージで」
「うんうん、で?」
「二人だけでライムしているつもりだったんだけど…間違ってクラスの女子グループの方でやりとりしていたの」
「っ!?それって誤爆ってやつじゃん!」
「うん。最初は全然気付かなかったんだけど、途中で新垣さんが『なになに?その話詳しく!』って入って来て気付いたの」
「ちょ、おま…新垣さんに何を話したんだ?あの『歩く三流週刊誌』に!」
「あたしもあの子に変な事は言えないと思ったから『翼君と晃一君にあたしがお願いして、神田先輩からの嘘告を阻止してもらった』って程度なんだけど」
「それで新垣さんが盛大に勘違いしてあのネット記事紛いのメッセージを作ったって事か」
「元々はあたしと秋絵が誤爆したのが悪いんだけど…」
「でもなぁ…それだけならクラスの中だけで収まるハズなんだけど、何故かかなり拡がっているぞ」
「あたしが神田先輩達の情報集める時に女子の
「あぁ。あれは助かったな」
「どうも誰かがネットワークに載せたらしくて、更に尾ひれが着いちゃって」
俺はこめかみを抑えて深いため息をつくと…雪子にこう告げた。
「起きた事は仕方ない。お前ら二人の不注意と言えば不注意だけど、今度からは気を付けてくれよ」
「はい…ごめんなさい」
「それと今日明日と学校に来れば明後日からゴールデンウィークで連休になるから多少は下火になるだろう。だから明日まで二人は俺とは学校内とか駅迄とか、他の生徒の眼が有る所では出来るだけ関わらない様にしてくれ」
「……それでいいの?」
「あぁ、この際は仕方ないだろ、秋絵だって迷惑だろうし。秋絵には夜にでも俺から連絡するからそれも合わせて伝えてくれ」
「…解ったわ」
「じゃあ頼むな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は雨な上にこの気分では寄り道する気にもならず、帰りのHRが終わると直ぐに晃一と駅へ向かった。
「なぁ晃一、どうしようか?」
「どうしようと僕に言われてもなぁ」
「だよなぁ」
「まぁ、翼が自分で何とかするしな無いんじゃないかな。僕は生暖かく見守ってあげるよ」
「うぅぅ~」
俺は本気で道の真ん中で頭を抱えそうになったが、傘と鞄を手にしているので何とか堪えて駅に辿り着き、ホームへ出ると俺たちの乗る方向の次の電車は急行。晃一は「一足お先に。また明日な」と言って手を挙げて帰って行き、俺は次の普通電車に乗り最寄駅から重い足取りで帰宅した。玄関から自室に行き、制服の上着とネクタイをハンガーに掛けてベッドの上に寝転ぶと、再び深いため息を吐く。「どうしようかなぁ」と独り言を呟くと…「そうか、女子の事は女子に相談するか」と隣部屋の扉をノックし「光~、入るよ」「どうぞ~」
俺は今日の出来事を光に話すと…
「ぷぶぶっ…アハハハッ、こ、このお兄ちゃんに、ギャハハハ、ダメだ、笑い過ぎてお腹痛い」
「お前、いくら何でも笑い過ぎだろ」
「だって、ハハハハ、電車の事しか考えていないみたいなお兄ちゃんに、ギャハハハ恋愛絡みの噂話が出るなんて、もう笑いのツボに
嵌まり過ぎだよ!」
「あのなぁ、俺は真剣に悩んでいるのだよ、そうでなきゃ妹にこんな話はしないわ!」
漸く笑いのツボが収まった光は暫く考えてこう言った。
「ざっと考えて、対処法は二つね」
「二つ?」
「うん、一つはこのまま放っておくの。『人の噂も75日』なんて言うでしょ?だから放っておけばそのうちに下火になるし、もしかしたら他の人の話題が出てお兄ちゃん達の事は忘れてくれるかもだし」
「なるほど。で、もう一つは?」
「もう一つは逆に『事実』にしちゃえば良いのよ」
「は?」
「だ~か~ら~、秋絵さんと付き合ちゃえば良いのよ」
「……何を言ってんだ、お前?」
「だって秋絵さん、可愛いし性格だって良いわよ。お兄ちゃんと相性だって悪くないと思うわよ」
「そんな事を考えた事無かったからなぁ。秋絵は幼馴染み以上でも以下でも無いからなぁ」
「………やっぱり『望お姉ちゃん』?」
「………」
「…まぁ一途なのは良いけど、そんな事だと一生『モテない独身鉄ヲタ』だよ」
「まぁ参考程度に聴いておくわ。あ、二番目の案は絶対に無いからな!」
「ハイハイ」
「サンキュ」
そう言って俺は自室へ戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自室の学習机の上には写真立てが3つ並んでいる。一つは幼稚園の卒園式で俺と女の子が並んでいる写真。一つは小学校の卒業式で俺を真ん中に秋絵と雪子の3人が並ぶ写真。もう一つは高1の時に家で勉強会をした時に家の前で前列に俺と晃一、後に秋絵と雪子が並んだ写真だ。その4人が写る写真を手にして考えていた。
(秋絵かぁ…光が言う様に確かに可愛いし性格だって真っ直ぐなところは認める。でも…恋愛対象として考えた事無いし、考えたくないのが正直な処だよなぁ。秋絵はあくまでも幼馴染みの一人だ。俺はやっぱり『あの娘』が忘れられないんだろうなぁ)と、机の上に在るもう一つの写真を眺めた。
「あ、ヤバい。もう23時近いじゃないか!秋絵に連絡は…もう遅いからメッセージだけ入れておくか」
『雪子から聴いていると思うけど、何とか噂を鎮めたいので聴いた対処を頼む。迷惑掛けて申し訳ない』
少しすると通知音が鳴って返事が来た。
『迷惑掛けたのはあたし達だから…少しお話ししたいんだけど通話して良いかな?』
俺は一瞬考えたが、さっきの光との話が有ったので妙に意識してしまいそうだったので
『ごめん、今朝早くて眠いんだ。明日の夜なら大丈夫だから』
『……了解。おやすみ』
こうして長い1日が終わり、俺はベッドへ潜り込むと直ぐに意識が遠のいていった。
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