第9話 訳が判らん事態になっているんだが
神田達が逃げる様に去った後、俺は晃一に訊ねた。
「本当に助かった。ところでみんなは何故、此処が分かったんだ?」と言うと吉田健二ってクラスメイトが「あ、それは俺から話そう」と言う。確か吉田はラグビー部の次期主力だっけ。
「昼休みの終わり頃に上野と秋川、それに白幡と那須の四人で何か深刻そうに話していただろう?」
「あぁ」
「それで少し気になっていたんだが、帰りのHRが終わったら直ぐに上野と秋川が荷物も持たずに出て行ったので『これは何か有るな』と思って白幡に訊いたんだ」
「雪子に?」
「あぁ。最初は大した事じゃないみたいな事を言っていたんだけど、『クラスメイトを信用しろよ』と言ったら簡単な状況と場所を教えてもらったんだ」
「雪子には後で感謝しないと」
「で、相手は神田達だろ?それならサッカー部の井上とか、野球部の石塚とか身体の大きな連中に声を掛けて協力してもらったんだ。奴らは所詮はチャラいだけで大した事無い連中だしな、周りを囲めばビビって何も出来ない筈だからな」
「ただ一つだけ計算外だった事が有ったな」とサッカー部の井上洋介が言った。彼もサッカー部では次期エースと呼ばれている男だ。
「上野、お前見掛けに寄らず素早く動けるんだな」
「いや、たまたまだよ」
「そんな隠さなくてもいいぞ。ともあれこれで奴らも大人しくなるだろう」
すると野球部副主将の石塚孝介が「もし、何か有ったら直ぐに俺たちを頼ってくれよ。逆に俺たちから上野や秋川とかを頼る事も有るかも知れんしな」と言ってくれた。俺は改めて「本当にありがとう。ただこの事は此処に居る人だけで内密にして欲しい」
「「「わかったぜ!」」」
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さて翌木曜日。俺は何時もの様に母さんの弁当を受け取って家を出た。そして何時も通りの電車で学校に向かい、学校最寄駅から歩き始めた。普段と違うのは雨降りで傘を差しているのと晃一が居ない事くらい。晃一なら1本後の電車でも余裕で間に合うので気にせず歩いていたのだが…何か空気感が普段とは違う。何が?と言われると何とも言えないのだけれど、何となく女子生徒からの視線が妙な感じだ。赤いリボンの2年生だけでは無く青いリボンの1年生、緑色リボンの3年生迄が同じように感じる。「何なんだろ?気のせいだよな」と呟き、学校に着いて上履きに履き替えて教室へ行き「おはよう~」と言って入ると…登校していた全員から一斉に視線 が!
取り敢えず、俺は自席の椅子に座り教室内を見渡すと、教室の一角に10人程度の女子生徒が固まっている。よく見れば雪子と秋絵も居るんだけど、何故か秋絵は顔が赤い?そして今日は珍しく先に登校していた晃一が俺の席にやって来た…が、何だか微妙な表情だ。そこで直ぐ前の席にいた
【上野 翼君、愛しの那須 秋絵さんの為に奮闘する。カップル誕生か?】
な、な、な、何じゃこりゃあぁぁぁぁ!
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!何なんだ、これは!?」
「翼、先ずは落ち着け!」
「落ち着いていられるかっ!誰がこんなもんを!」
すると雪子が俺の席へやって来て言った。
「ごめんなさい。私が原因かも…」
「は?」
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