第23話【我、深層に】バランスブレイカー【突入す!】
フラム迎えてから2日が経過した。
現在のDPは150,000くらいでFWは70,000人を超えた。ニュースやSNSでは地竜を討伐したダンジョン配信者の美少女二人で埋め尽くされていて、FWは未だに増え続けている。
ゼロは厳しくないかと思ったが、意外と順調である。
とはいえこれからは天使を召喚するタイミングには気をつけなければならないだろう。
グレードを下げた天使がFWをどれだけ持っていくのかは不明だが、ルエルが言うにはそこまで多くはないようなので、全部持っていかれるということはないようだ。後々増やしていくことにしよう。
それと、最近少し気になることがある。
それがFWの増加数だ。今までは好印象を抱かれるだけで増えるものだと思っていたが、その割には最近なかなか増えない。
日本のニュースではこの2日間ずっとこの話題が取り上げられているのにだ。
なのでやはり何かしら条件があるのだろう。俺がもしかしたら今まで違うと思っていた考えかもしれないし…正直この辺りは正解は見つかりそうにないな。
少し溜まりにくくなったといった感じだ。
さて、そんなこんなで俺達は今から外に出てダンジョンに向かうところだ。
メンバーは、俺、ルエル、そしてフラムだ。
正直どっちかは置いていこうかなと思ったが、深層のレベルを見極めるまではこのメンバーで行こうと思う。
ただ、一つだけ問題があった。
それがフラムの翼である。
正直ローブでは隠しきれないほどでかすぎるのだ。
翼一つのサイズが約2m前後。それが6枚も生えているのだからそりゃとんでもない。
「ん〜…どうしようかなぁ…」
「申し訳ございません…」
フラムは俺にそう謝罪をしながら翼をこちらに寄せてくるので優しく撫でてあげる。
あれから2日間、どうにかフラムは立ち直った。どうにか機嫌をとろうと頑張ったのだが変化はなく、フラムを慰めるための方法を教えてとルエルに泣きつくと、翼を撫でるという方法が天使には効果的だと教えてくれた。
なのでその方法を実践してみたのだが…結果は、大成功であった。
元気百倍、とまでは行かないが、結構精神的には安定したんじゃないかと思う。翼を撫でるだけでメンタルケア&維持できるなんてなんともコスパのいい仲間なのだろうか。
それにふわふわもふもふのフラムの翼は撫でていてこちらも癒やされるし…これがWin-Winと言うやつなのだろう。
この2日は何かと翼を寄せてくることが多いので、ちょっと甘やかし過ぎなのかとは思うが…まあ俺に損はないし別にいいだろう。
ちなみにルエルは触らせてくれなかった。理由は不明だが翼に手を伸ばすとスっと距離を空けられる。
っと、そんなことはどうでもいいのだ。
今はフラムの翼をどうにかしないといけないのだが、こんなときは魔法のアイテムである。ん〜っと…おっ。
「偽装の指輪って結構安いな」
ダンジョンでまれに宝箱から出てくるアイテムである偽装の指輪という物は10,000DP程度で交換できるようだ。
この偽装の指輪の能力は単純で、見た目を変えることができるというものだ。
ただ、デメリットもあり、防犯カメラやスマホのカメラ、写真など機械を通すと偽装が解ける点だ。
人間がダンジョンで入手したアイテム系の中だと相当高価な部類に入るが、今の俺にはこの程度のDPなど端金…いや、端DPである。
指輪を2つ交換し、出てきたシンプルな銀色の指輪フラムとルエルの右薬指にはめる。
そして…
「おぉ〜」
彼女たちの光輪と翼が見えなくなった。
「…どうでしょうか?」
「うん、完璧だね」
どこからどう見ても人間の美女美少女にしか見えない。
「それじゃ、行こうか?ちゃんと守ってね?」
「はっ。我が命に掛けてお守り致します!」
そうして準備を整えた俺達は、大地の試練に向かうのであった。
▼
「え?…ちょ…うそぉ…?」
今さっき探索者登録をしたフラムの探索者タグを見て、そんな声が漏れる。
筋力10、耐久9、俊敏9、精神4……えぇ?嘘でしょ?10とか初めて見たんだけど?
探索者の最高位である帝級になるための条件にステータスの一つが7に達するという条件がある。しかも世界では7が限界値だという話が一般的だ。
ルエルのステータスで8を見たことはあったので上限はもっとあるんだろうなとは思っていたが…これはちょっと強すぎるか?
いやはや、等級を上げるとき以外はタグの確認がなくて助かった。もし登録のときに確認されていたら不味いことになっていただろうしな。
「…何か問題がありましたか?」
「ん?いやいや、ただ強いなぁって思っただけだよ」
不安そうな顔でこちらの様子をうかがうフラムにそう言う。
強すぎる、が、今は助かる。あんな竜がわんさか出てくるのならルエルより強い実力者は必要になる。
いざというときはしっかりと彼女に戦ってもらおう。
「よし、フードは脱いでいいよ。あと翼と光輪も出しても問題ないかな?」
深層の穴の前で配信の準備をする。この辺りは通路だが、深層の穴周りはとんでもなく大きいし、人が来ていることはわかるから問題はない。
えーっと…待機人数は…60,000超えか。待機でこんだけの人が見てるって…もう人気ダンジョン配信者の仲間入りと言っても過言ではないのではないだろうか?
「あー、皆さんこんにちは。聞こえてますか?」
『聞こえた!』
『ついにキター!』
『フラムたんは!?』
『フラムたんを見せろぉ!』
『ここはダンジョン内か?』
「えー、そうです。今、俺はダンジョンにいます。そして今日のメンバーはルエルちゃんと〜?フラムちゃんです!」
そこでカメラをルエルとフラムの方に向ける。
『は?』
『え?』
『神?』
『天使だ…』
『いい加減にしろぉ!!!』
『俺の嫁ktkr!』
『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
『六翼とか厨ニ病が過ぎるだろ!!』
『わーお』
『ルエルたんもいつも通り可愛いよ!!』
『なんでこんな可愛い子たちにノスターが囲まれてるの?』
『これがエデンか…』
『フラムたんの翼に包まれて寝たい』
すると、ルエルと同じく勢い良くコメントが流れ出したので…
「はいはい、サービス終了〜」
カメラをフラムから逸らす。するとさっきまで歓喜していたコメント欄は批判コメントで埋め尽くされる。
『なんでだよ!』
『もっと見せやがれ!!』
『なんで!?』
『酷すぎんだろ!!』
『フラムたんをもっと見せろー!』
「落ち着け落ち着け…お前らあのまま見せてたら1時間は暴れるだろ?今日はしっかり進む予定だからあんまり時間かけれないんだよ」
『え〜?』
『もっと見せてよー』
『フラムたんが…フラムたんが足りない…』
『僕のフラムたんを返せ!!』
コメントはフラムを求めているが、ここは心を鬼にする。
「自分のダンジョンに帰ったあと時間取るから安心してくれ。深層攻略後は天使をもっと増やしてダンジョン運営にも力を入れてくつもりだし、そのときにリアルで見ることもできるんだから…」
深層攻略後はしっかりとダンジョン運営をするつもりだ。
安価や美少女板、というか掲示板を見ない様なガチガチの仕事として探索しているチームや探索者をFWにするにはこれが一番効率がいいだろうしな。
それに、本当にダンジョンを運営していると知られればニュースの独占は間違いないし、FWを大量ゲットのチャンスだ。
『ルエルたんとフラムたんをリアルで見れるんですか!?』
『まじかよ!』
『雷帝さんご褒美意味なくてカワイソス』
『確かにwwww』
「雷帝さんには1時間一対一でお話コースの予定だから安心してくれ」
『嘘だろ…』
『俺もルエルたんとお話したいぃ!!!』
「よし、コメントと話ししてたら無限に続きそうだから、そろそろ深層に行くぞ」
『昇降機ないけどどうする気なの?』
『流石に前回と同じだと上がるのは無理だろ?』
「疑問に思っている人も多いみたいだけど安心してくれ。俺には完璧な作戦があるからな。フラム、頼んだぞ」
「……し…失礼致しまふ…」
俺はフラムに体を預け、ルエルはフラムにおんぶされる。
結構迷ったが俺はこれが最適解だと考えた。そろそろ視聴者には俺が言っていることを本気信じてもらいたいと思っていたし、後のダンジョン運営も本当に?と思ってもらいたいところだしな。
『完璧な作戦?』
『ざわ…ざわ…』
『一体どうやって…』
『もしかして?』
『その翼って飾りじゃないの?』
『力強っ』
『というか今噛んだ?』
『かわいい』
『フラムたんにお姫様抱っこされる…だと?!』
「それじゃあ…レッツゴー!」
そんな気の抜けるような俺の掛け声とともに…
───────俺達は空を飛んだ。
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