第6話【悩みを】理想の世界は平穏で【聞いてくれ】
「───、──────」
なん……だ…?
「─適合─────魂───明」
何か声が聞こえる。
寝る前に動画でもつけっぱなしだったか…?
「─印─除───不─能──」
むぅ…気持ちよく寝ているはずなのに…遠くで聞こえる声が気になって…声?
「────な!?」
勢い良く体を起こし、声が聞こえる方向を向く。そこには、こちらをじっと見つめる白い天使。
「…………今…喋った?」
「…肯定します」
無感情で無機質な、それでいて美しい声で彼女はそう返事をした。
「え!?喋れたの!!?」
「…否定します」
「ん?あ〜…喋れるようになったって感じ?」
「…肯定します」
「どうして突然喋れるように?」
「…言葉を理解する。私は声を発しました」
あれ…?なんか、喋ってはいるんだけど…
「パンはパンでも食べられないパンは?」
「…………………パン?」
なんか、めっちゃ性能の悪いAIって感じじゃね…?
「君の名前は?」
「マスターにルエルと命名されました。機体識別番号は【αʹ - κόρη - lūx 001】です」
………はい?
機体識別番号…って言ったら、作られた番号みたいなやつだよな?どういうことだ?俺がDPで生み出したんじゃないのか?
……あ〜、よく考えればDPで交換すれば生物を作り出すっておかしいよな…?召喚って書いてあるくらいだし、何処かからモンスターを呼び出しているってことか?
「えーっと…君の生まれた場所は?」
「私は繧ィ繝?Φで、人間によって製造されました」
「え?何処…?」
「繧ィ繝?Φです」
うーん…違う言語なのか全く聞き取れないし理解できない。まあ、わからないなら放っておくか。
とはいえ、色々と知っておくべきだよなぁ…?流石に自分の部下になった人の経歴を知らないのはおかしな話だし…まずは彼女の過去を聞いてみるか。
「ルエルの、生まれたときとその時代の話を教えて?」
「私は繧ィ繝?Φにて、人間に製造された器械天使の終焉器体。与えられた指令は神の抹殺」
「神の抹殺…?」
なんかとんでもないこと言ってない?
「二千万年前、太陽系の惑星の一つに別次元からの干渉を確認。対象名は『諢壹°縺ェ豬キ』」
「……なんだって?」
「『諢壹°縺ェ豬キ』は自らを神と名乗り眷属を連れ地球に侵略。その後、地球の神『謌代′荳サ』とその眷属が迎撃し戦争が始まりました。その後人間は『謌代′荳サ』を支援するため、器械天使を作り出しました。その最後に生み出された器体がこの私です」
「なるほど…?」
「結果『謌代′荳サ』は敗北。眷属は神の力の消失により休眠。繧ィ繝?Φは海に沈められ、住民は全員死亡。器械天使は全機体の指揮権を『謌代′荳サ』に委ねていたため機能が停止。その後、『諢壹°縺ェ豬キ』は地球の支配権を数千万年の時をかけて奪取、そして現在、ダンジョンと呼称される神殿を作り人間の信仰を貯蓄しています」
事前情報は全く無いが…意外と理解はできる。
多分、地球の外?から神を名乗るやばいやつが侵略してきて、それと地球の神が戦って、それを助けるために器械天使が作られて、その最後機体が彼女というわけだ。
だが、最終的には地球陣営の敗北、そして邪神は二千万年の時をかけて地球の支配権を奪い取り、この世界を手に入れたというわけだ。
そしてダンジョンという無限の資源で人間を釣り、信仰心を貯めているってわけか…?
「もし、邪神が信仰心を貯めまくったらどうなるんだ?」
「『諢壹°縺ェ豬キ』は地球の支配権を放棄し、別の次元へと向かうでしょう。人間はそれを止めなければなりません」
「ん?いいことじゃないのか?」
「…地球の支配権が放棄された場合、新たな神は誕生しません。その場合地球は支配者による力の供給を受けることができず自壊…即ち消失します」
「………嘘でしょ?」
「人間が生き残る方法はただ一つ。神の座を奪還することです」
……やばくねそれ?
「ちなみに…あと何年くらいの猶予があるとかわかる?」
「…不明。人間の数、ダンジョンへの執着を踏まえて…五万年以内には確実です」
「ほっ…五万年も掛かるのか。なら安心だな」
「…安心ですか?」
「ん?まぁ、俺は人間だしなぁ…地球の未来の為に!ってほど英雄気質でもないし。自分が死ぬなら死ぬ気で戦うけど」
「それであれば、『諢壹°縺ェ豬キ』の抹殺をおすすめいたします」
「え?なんで?」
「現在、死亡した生命体の魂は転生という道ではなく『諢壹°縺ェ豬キ』によってエネルギーとして取り込まれています。永遠の闇の中で、永遠の苦痛を感じ続けることになるかと」
「………えぇ?」
とんでもないことを言いやがるこの娘…嘘だろ?俺邪神退治しないといけないの??
無理だろ?地球の神様すら負けたのに、普通の人間の俺が邪神に勝てるわけ…あれ?でも俺は普通じゃないのか…?
………よし。物は試しだ。
「ルエル。俺がその邪神に勝てる方法はあるか?」
「…可か不可であれば可能です。マスターは神の力を所持していますので」
「神の力…そうか、これ神の力なのか」
「神の力をマスターが得ると、それだけ『諢壹°縺ェ豬キ』の力を削ぐことが可能です」
「でもFWを奪っても、貯めてるDPは奪えなくね?滅茶苦茶貯めてるのなら勝てない気が…」
「信仰心はとある理由により、各ダンジョンに貯蓄されています。そしてマスターが行うダンジョンの破壊は信仰の直接的な回収となります」
な…なるほど?そう聞くと結構行けそうな気もしてきたな…?
敵の貯めたダンジョンを俺が攻略すれば、その今まで貯めていたDPを一気に奪えるってわけか…
「ちなみにそのとある理由って?邪神が自分で持ってたら駄目なの?」
「『諢壹°縺ェ豬キ』は、神を自称しているだけの別世界の人間であり、全ての信仰を魂に貯蓄することが不可能なのです。そのため、ダンジョン各神殿に貯蓄し、それを取り出すことで神の如き力を扱っています」
もう頭がパンクしそうだよ。邪神が人間?
「でも…人間なら勝てるか…?」
相手が神なら多分、というか絶対勝てないだろう。知能とか元の実力とかその他諸々が全部違う。だが、相手が人間で、力を削げるのなら…
「嫌でもなぁ〜…なんで俺がやらなきゃならないって思っちゃったりもするし…嫌だなぁ…痛いのも嫌だなぁ…」
頭の中で逃げたいという気持ちが大きくなっていく。こんなことできない。諦めよう。俺じゃなくても他の人がやってくれる。なんで俺がやらなきゃならないんだ?そんなマイナスな気持ちがどんどんと湧き上がってくる。
そうだよ。俺がやらなくても誰かがやるんだ。やらなきゃ死ぬなら誰かがやる。100年もあれば誰かが邪神退治くらいやってくれるはずだ。だから…
「…………」
ふと、こちらの方を見つめる彼女が目に入る。
ピクリとも動かない無表情で、じっとこちらを見つめている。何を考えているのかなんて全くわからない。
彼女は何を望んでいるのだろうか。
やっぱり、神の抹殺の為に作られたのだから、邪神人間を殺してほしいのか?
「んーっと…ルエルはどうして欲しいんだ?」
「…どうして欲しい、とは?」
「え?やっぱ、邪神を倒してほしい…とか?」
「…私はマスターの命令に従います。マスターが『諢壹°縺ェ豬キ』を殺せと命じられれば命令に従います」
「…なんで俺がマスターなんだ?召喚しただけだろ?」
「…不明です。ですが、マスターはマスターです」
彼女は完全に俺に判断を委ねている。
俺が決めろっていうことかよ…
……無理だ。勝てるわけがない。たとえ相手が人間だとしても、神に勝利した化物だぞ?それに数千万歳。勝てるわけがないのだ。
「ルエルなら邪神に勝てたりしない?俺はここで引き籠もって君たちが勝つのを待ってたり…」
「不可能です。貯蓄された信仰心はマスターがいなければ吸収できず、そのまま付近の神殿に取り込まれますので」
「……他の天使は?」
「器械天使は召喚しても器だけなので戦えません。『謌代′荳サ』の眷属であっても不可能でしょう。実力以外にも、『諢壹°縺ェ豬キ』を殺害したところで、相手から貯蓄された信仰心を奪わなければ無限に蘇ります」
「…え?ってことは俺が直接戦わないといけないの!?」
「はい。神殿を全て破壊し、天使と協力をしながら『諢壹°縺ェ豬キ』を殺害するのが唯一の方法かと」
「無理じゃね?俺の能力もそうだしダンジョンを全部破壊って…」
「可能です。小さな神殿は中継地点で、実際の貯蓄場所はとある8ヶ所の神殿なので」
「なんでそんな都合よく出来てんだよ…」
いっそのこと不可能であってほしかった。
絶対に殺せない敵で、死ぬのを待つしかないのなら絶望できるのに…諦めれるのに……
決められない。無理だ。俺には荷が重すぎる。
俺はこのダンジョンでルエルちゃんにコスプレでもさせながらFWを稼いで生きていくんだ…
──────────────
DP︰7,864 DP
FW︰7,200
『召喚』『調整』『交換』
──────────────
随分とFWが増えている。多分寝ている間に広まったんだろうな。
やっぱり大丈夫だ。こうやって生きていれば、いつかきっと誰かが解決してくれる。その時まで安価スレで住民たちと戯れながら…
……………………………
……………
……
1:ナナシノダンジョンマスター:
おはようニート共
2:名無しさん@ダンジョンマスター:
どうした?不穏なサブタイだなおい…
3:名無しさん@ダンジョンマスター:
安価達成したんか?
4:名無しさん@ダンジョンマスター:
怪しげな雰囲気
…もしかしてコスプレさせ過ぎて振られた?
5:名無しさん@ダンジョンマスター:
ざまぁwwwww
あれ?ナナシが振られたら俺達はもうルエルたんが見れなく…?
6:名無しさんはロボ娘愛好家:
もうルエルたん見れないの!?
7:名無しさん@ダンジョンマスター:
なんか安価じゃない感じ?
辛いなら話くらい聞くで
8:名無しさん@ダンジョンマスター:
どしたん話聞こか?
9:名無しさん@ダンジョンマスター:
>>8
下半身見えてるぞ
10:名無しさん@ダンジョンマスター:
安価結果はよ!超重量級天使ルエルたんを見せてくれ!
11:ナナシノダンジョンマスター:
あ〜安価?
https://※※※※.jpg
ほれ
12:名無しさん@ダンジョンマスター:
うぉぉぉぉぉ!!!?!
13:名無しさん@ダンジョンマスター:
そんなあっさり出すなよ!ショックタヒするだろ!
14:名無しさんはロボ娘愛好家:
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
15:名無しさん@ダンジョンマスター:
格好いいと可愛いと美しいが合わさって核融合が!!?!
16:名無しさん@ダンジョンマスター:
ああ……あああああ〜〜っ!目がぁぁ〜!目がぁぁぁぁあっ!!
17:名無しさん@ダンジョンマスター:
ロリコン製造機だなこりゃ…
18:名無しさん@ダンジョンマスター:
これはSFにも沼らせてロリにも沼らせる最悪のトラップなんじゃ…?
19:名無しさん@ダンジョンマスター:
パイルバンカーかっこよすぎだろ!?
20:名無しさん@ダンジョンマスター:
バスターランチャーはしまってるのか?
構えてるところ見てぇ…
21:名無しさんはロボ娘愛好家:
あまりカラーリングがされてなくて、無骨な色味とデザインが素晴らしいですね
22:名無しさん@ダンジョンマスター:
100点
23:名無しさん@ダンジョンマスター:
昨日から画像が見えないんだけど?
というか前が見えないんだけど?
24:名無しさん@ダンジョンマスター:
重たそう
25:名無しさん@ダンジョンマスター:
ハリボテでもこのクオリティはやべぇな
ダンボールとかで作ってるの?
26:名無しさん@ダンジョンマスター:
ルエルたんの連絡先教えて
27:名無しさん@ダンジョンマスター:
めっちゃ気になるわ
28:ナナシノダンジョンマスター:
お前らって、悩みってある?
29:名無しさん@ダンジョンマスター:
お?突然どうした?
30:名無しさん@ダンジョンマスター:
悩み無いやつなんていないだろ
31:名無しさん@ダンジョンマスター:
悩みなんてないわ
32:名無しさん@ダンジョンマスター:
ここは人生相談スレじゃなくてただの安価スレだ
ここでそんな難しいこと聞くな
33:ナナシノダンジョンマスター:
……そうか。それじゃ安価。
>>50
安価の内容は、世界が滅びるって話を聞いたんだけどこれからどうする?、だ。
34:名無しさん@ダンジョンマスター:
おいおい?ガチでどうした?
35:名無しさん@ダンジョンマスター:
やっぱ振られたんか?
振られたんやろ?
36:名無しさんはロボ娘愛好家:
これは重症か…
37:名無しさん@ダンジョンマスター:
まぁまぁ、こういうのはとりあえず付き合ってあげるもんだぜ?
世界が滅びるんなら…俺なら親孝行や。
38:名無しさん@ダンジョンマスター:
>>37
ニートのくせに親孝行って…
39:名無しさん@ダンジョンマスター:
>>38
ニート関係ないやろ!
40:名無しさんはロボ娘愛好家:
世界が滅びるなら今まで見てきたアニメでも見漁るかな?
それで今まで見てこなかったアニメも見まくる
41:名無しさん@ダンジョンマスター:
趣味に生きるのはわかるな…
まあ俺なら世界の崩壊を止めるんですけどね?
42:名無しさん@ダンジョンマスター:
>>41
無理なこと言うなやwwwww
お前が止められるのって言ったら精々クレジットカードくらいだろwwww
43:名無しさん@ダンジョンマスター:
ひでぇwwww
まあ、滅びるなら…地球の外に逃げるとか?
火星に移住とかダンジョンもあるしできそうじゃない?
44:名無しさん@ダンジョンマスター:
魚食う
45:名無しさん@ダンジョンマスター:
諦めて犯罪する
46:名無しさん@ダンジョンマスター:
基本的に犯罪か親孝行か趣味になるよな
俺ならダンジョン探索一択や。最後に攻略者になるんや
47:名無しさん@ダンジョンマスター:
死んでも変わらないならダンジョン探索かも
48:名無しさん@ダンジョンマスター:
100人頃して英雄になる
49:名無しさん@ダンジョンマスター:
暴飲暴食!タバコ!女!酒!!!
50:名無しさん@ダンジョンマスター:
滅びが止められるものなら頑張る。無理なら諦める
でも、どうせ死ぬなら、止められるかどうか1回くらいは頑張ってみるかな
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