めがねっ娘のめがねは何でもお見通し

一陽吉

どうせ見るなら笑顔よね

 男女あわせて三十人の我が二年A組において、めがねをかけた女子は私一人。


 つまり、クラスの貴重なめがねっ娘である。


 だがそれによる特権などはなく、ごく普通に高校生として過ごしている。


 そもそもこの黒縁めがねは視力が低い私のために、お祖父ちゃんが特別に作ってくれたもの。


 しかも、もとからある材料で作ったから、実質、ロハ。


 ただなのはいいんだけど、ちょっといろいろ訳ありな仕様になっている。


 なぜならお祖父ちゃんは魔導工学技士。


 魔力を通して起動する道具なんかを作る職人さんで、腕は超一流ながら凝り性でもある。


 だから、望遠鏡のように遠くを見たり、顕微鏡のようにめっちゃ小さいものを見られるほか、熱源や暗視に透視、霊や魔力に加え、運気の波動まで見える。


 それは私の意思によって切り替えできるけど、平和な日本社会の中で通学するのに必要のない機能ばかりである。


 とはいえ、それだけの機能がついていながら、めがねのフレームが太くなったり、レンズが厚くなったりしないのはさすがと言える。


 ──さて、クラスメイトのみんなが全員、登校したわね。


 それじゃあ今日の一時限目、社会の教科書とノートを出しておきますか。


 て。


 おや?


 めがねっ娘の私と双璧を成す、地味娘の小花こはなちゃん。


 なんかいつもの、おとなしいというよりは沈んだ雰囲気で、小柄な身体からだがますます小さく見える。


 これは何かあったようね。


 ちょっと霊的な方で見てみますか。


 どれどれ……。


 !?


 むむむ。


 小花ちゃん、犬や猫の雑霊に憑りつかれてる。


 沈んだ雰囲気はそのせいか。


 これを放っておくわけにはいくまい。


 私、加藤恵純かとうえじゅんがクラスメイトのために一肌脱いでしんぜよう。


 まず、机の下にて左手の人差し指を使って右手の平に『聖』の文字をこっそり書く。


 そして、魔力がこもった『聖』の字を両手の平でこすりあわせて丸めて。


 みんなの視線を確認しながら、気づかれないように、指弾しだん


 よし!


 小花ちゃんに命中したわ。


 雑霊は……。


 ない!


 消えてる。


 除霊、成功だわ。


 私って、お祖父ちゃんは魔導工学技士だけど、お父さんは魔術師でお母さんは武術家だからね。


 その血を見事に受け継いだ私はこんな形で除霊ができる。


 まあ、それは秘密なんですがな。


 ──そして休憩時間。


 奈津美ちゃん、智子ちゃんの仲良し三人組で話してる小花ちゃん。


 朝の沈んだ雰囲気が完全に消えて、明るくなってる。


 いいねえ、その笑顔。


 やっぱ人を見るなら笑顔が一番だねえ。

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