【短編/1話完結】伊達メガネをつけた少女とからかう少年

茉莉多 真遊人

本編

 とある学校の休み時間に眠たそうな少年がいた。目をとろんとさせ、まだ休み時間が終わっていないことを確認すると、また眠りに就こうとする。


 その時、不意に横から少女が少年に話しかける。


「ねぇ、私、かわいい?」


 少女はこれ見よがしにメガネをクイクイと両手で上げ下げしている。彼女は普段、メガネをかけていなかったために、メガネ姿を少年に見せたかった。


「……ポマード! ポマード!」


「誰が口裂け女よ! 昨日のテレビで見たから言ったわけじゃないわよ!」


 少年は少女と昨日やり取りしていた内容を思い出したかのように、口裂け女を避ける呪文を唱えるが、当然少女の反応は怒りの波動を示していた。


「急にどうした」


「急に素に戻らないでよ……どう? メガネを付けてみたんだけど」


 少年はじっとメガネ姿の少女を見つめた後に、ゆっくりと口を開く。


「キロの次?」


「…………それはメガね……じゃないのよ! ちょっと考えたじゃない!」


 いつもと違う雰囲気の少女がいつものように反応してくれたことに少年は安堵する。


「じゃあ、異なる金属を熱で幾重にも重ね合わせた?」


「…………えっと、それは木目金もくめがね! スマホで調べさせないでよ!」


 少年の言葉がピンと来なかった少女はスマホで少年の言葉をそのまま打ち込んで調べ、調べ終わった途端にツッコんだ。


「伊達メガネ、かわいいね」


 少年は柔らかな笑みを浮かべて、少女のメガネの縁をそっとなぞる。少女はまるで自分の顔を撫でられたかのように赤面し、彼の言葉でさらに顔を真っ赤にした。


「……えっ……ちょっ! って、なんで伊達って分かるのよ!」


「え? 伊達じゃないの?」


 少年が確認のために顔を近付けると、彼女は湯気が出るかと思うくらいに顔が茹で上がったような赤色になった。


「近っ! 急に顔を近付けるな!」


「だって、かわいいんだから、もっと見たくなるじゃない?」


 少年が笑い、少女が騒ぐので、周りはイチャイチャなら他所でしてほしいと思うばかりだった。

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【短編/1話完結】伊達メガネをつけた少女とからかう少年 茉莉多 真遊人 @Mayuto_Matsurita

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