プリンセスナイトと生産職

今日はギルドを設立することにした。

 シロウとセレナはログインして広場でヒナタとユキを待つ。

 少し待っているとヒナタとユキがやってきた。

 

「ごめん、お待たせ」

「ごめん、まったかな?」

「ううん、そんなに待ってないよ」

「私達も少し前にログインしたばかりなので大丈夫です」

「それじゃあまずは、ギルド管理協会にギルド設立の届け出を出して、お金を払わなきゃだね」

「はーい」

「そういえば…ギルドの名前はどうしようか」

「騎士君が決めてよ、ギルドマスターになるわけだし」

「私もそれがいいと思う」

「シロウ様にお任せします」

 

 三人から言われてシロウは歩きながら考える。

 広場の中央から少し北寄りに行くと、大きな三階建ての建物が見えてきた。赤レンガの瀟洒な建物で、ギルド管理協会というか、歴史ある高級ホテルにも見えた。

 中に入るとホールのような場所に机やソファー、観葉植物などが置かれてあって、中までホテルのロビーみたいだ。

 カウンターには何人かの受付嬢がいたが、その中でも空いていた【エルフ】の女性のところへ向かった。

 

「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか」

 

 エルフの受付嬢は真白に向けてにこりとした笑顔を向けた。

 

「ギルド設立の登録に来ました。手続きをお願いします」

「かしこまりました。ではこちらに必要条項を記入したあと、ご入金をお願い致します」

 

 真白の前にウィンドウが開く。渡された羽ペンで真白がそこにスラスラと書き込んでいった。

 ギルドマスターは誰か、サブマスターは誰とか書き込んでいく。羽ペンをセレナに渡してサブマスターのところを書き込む。

 ちなみにギルド設立のお金はシロウにすでに渡されてあり、きっちり四等分だ。

 設立自体のお金はそれほどでもなかった。まだギルドホームを購入をしてないからだ。

 

「はい。ギルド【スターライト】登録完了しました。こちらがギルド登録証カードになります】

「登録終わったよ。セレナ、ヒナタ、ユキ、こちらからギルド勧誘のメールを送るのから登録お願いね」

「了解しました」

「はーい」

「うん、わかった」

 

 個別のウィンドウにある、【ギルド】の欄にメールが来ている。

 所属しますか? の質問に四人がYESと答えると、すぐに許可されて【所属ギルド】が【スターライト】となった。どうやら全員無事に登録できたみたいだ。

 ギルドメンバー欄にセレナ、ヒナタ、ユキの名前がある。四人は問題なく所属できたようだ。

 

「やったね、騎士君! これで本拠地ギルドホームを持てるようになったね!」

「まだだよ、ヒナタ。今度は本拠地を買ったり建てたりしなきゃいけないからね」

 

 はしゃぐヒナタにシロウが苦笑いしながらそう言葉を返す。

 ギルドホームをを造るには二通りの方法がある。一つはギルド管理協会のカタログから選ぶ方法。何種類かのの中から拠点に建てるギルドホームを選び、すでに完成している家をその土地に転移させる。

 もう一つは【建築】スキル持つプレイヤー、もしくはNPCに建ててもらうこと。こちらは資材を自分達で用意をするので手間がかかる。素材から全部自分達で集めればギルドホームを買うより、グッと安くなる。

 プレイヤーから頼めれば【建築】スキルの熟練度アップにもなる。

 こちらは細かいところまで自分達でこだわれるので、自由度が高いのが魅力だ。後から増築することもできる。

 街には【建築】スキルを持つ大工もそれなりにいるから、NPCのツテがあれば安くもしてくれる。

 もちろん自分が【建築】スキルを持っていれば自分で建てても構わない。

 

「私達の場合、【建築】スキルを誰も持っていませんし、やはりカタログからということになるでしょうか?」

「うーん、それもいいかもしれないけどやっぱり自分たちでいろいろ決めたいよね」

 

 セレナとユキがそんな話しをしているが、実際誰も【建築】スキルを持っていない。今から育てるにしてもかなり時間がかかる。

 

「一人【建築】スキルじゃないけど、生産職のプレイヤーで【鍛治】スキル持ちが知り合いにいるから。ひょっとしたら、その人が【建築】スキル持ちのツテを持っているかもしれない」

 

 エトワール王国には、生産職と言われるプレイヤーが集まる場所がある。

 シロウは三人を連れて一軒の店に入る。

 中には女の人がニ人カウンター越しに作業をしていた。

 

「こんにちは、リサさん、ユカさん」

「いらっしゃいシロちゃん。あら? 可愛い子たちね」

「いらっしゃいシロくん」

 

 シロウが声をかけた相手は【魔族】の女性二人だった。

 青目青色髪のポニーテールでツナギを着た、長身の美人でスタイルが良く、年上のお姉さんだ。

 もう一人は青目青色髪のショートカットで活発そうな女性だ。

 二人は姉妹で一緒に店を経営している。

 

「お久しぶりです。この人はリサさんとユカさん、鍛治師と裁縫師だよ」

「久しぶりだな! リサがユカ」

「初めまして、ヒナタっていいます」

「初めまして、ユキです」

「初めまして、セレナと申します」

 

 三人はリサに向けてペコリと頭を下げる。

 

「あらご丁寧に。私はリサよ。以後よろしくね。ふふふ、シロちゃん、女の子パーティに黒一点ね。モテモテねぇー」

「ハーレムパーティ……?」

「やー。そういうのじゃないんで」

 

 肘でツンツンつついてくるリサに苦笑して返す。

 

「ええ〜、つまんないわ。それで何か買いにきたのかしら?」

「あー……とですね。実は僕らギルドを作りまして。リサさんかユカさんの知り合いの生産職に【建築】スキルを持つプレイヤーはいませんか? できれば紹介してもらえると助かるんですが」

「【建築】持ちねぇ……。何人かはいるけど、まだ熟練度が低くかったり、他の仕事を抱え込んでたりで……。ああ、あの子がいたわよね?」

「うん、大丈夫だと思うよ」

「誰かいますか?」

「いるにはいる。ただちょっと騒がしい子だけど、腕は確かね。ちょっと待ってててね、連絡してみるわ」

 

 ウィンドウを開くとリサは【建築】スキルを持つプレイヤーにメッセージを送った。

 

「今から来るみたいだから、ちょっと待ってててね」

 

 リサとユキの店の商品を見せてもらいながらシロウ達は【建築】スキルを持つプレイヤーを待つ。所狭しと色々な種類の武器と防具、服などが置いてある。

 バーンっと勢いよくドアが開けられる。

 

「リサさーん、ユカさーん、来たッスよ!」

「ふふふ、いつも元気ね。マツリちゃん、来てくれてありがとうね」

「マツリちゃん、いらっしゃい。来てくれてありがとう」

 

 黒のベスト黒のズボン、キャスケットを被り、腰には大工道具と中型のハンマーをぶら下げている。

【獣人族ビーストぞく】でシロウより年下に見える。

 

「マツリちゃん、こちらのギルドの方が貴女にギルドホームを建ててほしいみたいよ」

「どうも、こんにちはッス! 自分、マツリっていうッス。 皆さんのギルドホームを建てればいいッスか?」

 

 聞いてくるマツリにセレナが一歩前に出て話しかけて答える。

 

「はい。我々は【建築】スキルを持っていませんので。お願いできますか?」

「それは自分も熟練度アップになるッスし、ありがたいッス」

 

 どうやらマツリは引き受けてくれるみたいだ。

 

「ギルドホームを【建築】するには、場所と資材が必要ッス。そちらの方は?」

「場所はまだ決まってません。資材は必要な物を指定していただければ、こちらで用意させていただきます」

「そうッスね……」

 

 ギルドホームを造るために必要な資材をマツリが教えてくれる。

 

「私もシロちゃん達のギルドに入っていいかしら?」

「私も私も、シロくん達のギルドに入りたい!」

「二人は生産職の中ではトップクラスに入る実力ですよね。他の有名ギルドから勧誘されてませんでしたか?」

「確かにあったけど、私は納得のいった物や気に入った物を作って、気に入った人に売る方が気楽だから。断っていたのよ」

「私もお姉ちゃんと同じでさ。好きなものを作って気に入った人達に売る方が気が楽でいいんだ」

「そうだったんですね。でもどうして僕達のギルドに?」

「ふふふ、それわね。こんなに可愛い子達がいるのだもの、入りたくなるわ。そ・れ・に、この子達に似合う防具を作るって考えるとゾクゾクするわ!」

「私もお姉ちゃんほどじゃないけど、そんな感じかなー」

 

 怪しい笑みを浮かべてリサは言った。リサは可愛い子やものが好きで、ロリとショタ好きでもあるのだ。

 ユカも同様だが姉ほどではないが、可愛いものが好きだ。

 二人は生産職の中ではトップクラスの実力を持つ

 生産職のプレイヤーが入ってくれるのは嬉しい。

 

「ヒナタ達はどうかな?」

「私はいいと思うよ」

「私も賛成かな」

「私はシロウ様にお任せします」

「オイラもいいと思うぜ!

 

 聞いてみると、ヒナタ達からは反対意見はないようだ。

 

「わかりました。ただ入る前に聞いてほしい話があるので、その話を聞いてから僕達のギルドに入るかどうか考えてください」

「わかったわ。聞かせてちょうだい」

「どんな話かな?」

 

 プリンセスナイトの事や昴の事、ギルドを結成することになった理由を二人に話した。

 

「なるほどねー、シロちゃんは七冠の一人にプリンセスナイトとして選ばれたわけだから、その人の頼みを聞いてソルの塔頂上を目指すと?」

「まぁ、そういうことです」

「アストラルの開発者が敵なんてね、なんかあんまり信じられないなぁ。シロくんが嘘をつくような人じゃないってことはわかるんだけど」

「まあ気持ちはわからなくもないです。なのでよーく考えてから、僕達のギルドに入るかを検討してください」

「……決めたわ。私はシロちゃんのギルドに入るわ」

「……私もシロくんのギルドに入る」

「時間はあるのでそんなに急がなくても……」

 

 二人は少し考え込んでから、シロウ達のギルドに入ることにした。

 

「開発者が敵だなんて、ワクワクするわ。私の防具や武器がどこまで通用するのか気になるわー!」

「だねだね! 私もワクワクしてきたー!」

 

 二人は乗り気のようだ。

 

「いやー……あのお二人とも」

「まあまあ騎士君いいじゃん! リサさんとユカさんが良いって言ってるんだから」

「そうなんだけどね……」

 

 二人が入ってくれるのは嬉しいし喜びもあるが少々、シロウは複雑だった。

 入ってくれるのも嬉しい気持ちはあった。

 明日からは資材集めとギルドホームを建てる場所を探すことなり、シロウは忙しくなりそうだと思うのだった。

 

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