プリンセスナイトの日常3

学校が終わり、いつものように『アストラル』をやるために帰ろうとしたのだが、由紀が先生に捕まり、プリントの整理を頼まれていた。

 由紀はよく教師に頼まれごとをされることが多く、そんな彼女は嫌な顔をせずに快く引き受けるのだ。

 光瑠達とヒナタが手伝いを申し出た。

 

「由紀が残ってやるなら手伝うよ」

「私も手伝うよ」

「今日は部活が休みだから私も手伝うよ!」

「みんなが手伝うなら俺も」

「僕も手伝わせてもらっていいかな?」

 

 光瑠達がいるなら手伝う必要はないが、真白も手伝いを申し出た。

 

「いや、俺達で……」

「神原君、助かるよ。由紀もいいだろう?」

「うん、もちろんだよ」

「人数が多い方が早く終わるから助かるよ」

 

 断ろうとした光瑠に潤が割って入り、由紀に確認した。

 由紀は承諾しひなたもいいようだ。

 なんのつもりだといった表情をしているが、別に真白は手伝いをしたいだけなのだ。

 

「弟くーん! 帰ろうー!」

「ああ、ごめんね。やることがあるから姉さんは先に帰ってていいよ」

 

 二年の教室に紗希が真白と帰るために入ってきた。

 

「俺にも年上の幼馴染がいればなー」

「俺も四條先輩みたいな人に甘えたい!」

 

 まだ教室に残っている一部の男子達が欲望が混じったことを言い、羨ましそうに視線を向ける。

 

「男の娘とお姉さんとの関係性最高!」

 

 女子は女子で真白と紗希の絡みを見て興奮しているものもいる。

 

「それならお姉ちゃんも手伝うよ!」

「んー、草摩さん達はいいかな?」

「手伝ってくれるなら助かります」

「私も大丈夫です」

「私、先輩とはお話してみたかったんだー」

「……俺も大丈夫です」

「大丈夫っす」

 

 確認してみると大丈夫みたいで、紗希も手伝うことになった。由紀達は喜び光瑠と隆太は緊張した感じになる。

 

「紗希先輩! どうしたら紗希先輩みたいにスタイルの良い女性になれるのでしょうか!」

「スタイルの良い女性に?」

「はい! どうやってスタイルを維持してるのか気になって」

「確かに私も気になりますね」

「んー、ひなたちゃんと潤ちゃん、私は別に大したことはしてないよー」

「本当ですか? 何かあるんじゃ?」

「いい? 女性の魅力はスタイルだけじゃないんだよ。大事なのは中身であると同時に相手を想うが大切なんだよ」

「「「相手を想う……ですか」」」

 

 完全に蚊帳の外になってしまった真白と光瑠に隆太だがそれは仕方なく、今女子達の間で行われている会話は男の身からしたらどうも会話に入りづらい内容ばかり。

 真白はそっと距離を取るように、椅子を移動させてからプリントの整理をするのだった。

 由紀達四人の方は姦しく騒いでおり、キミ達の仕事はどうしたんだいと言いたくなるが……やっぱりこうして眺めているのも悪くない。

 

「……ははっ」

「……ふふっ」

 

 彼女達を見ていると光瑠と隆太が自然と笑みが零れた。四人の美少女が仲良くしている姿が目の保養になる。

 

「楽しそうだなぁ」

「そうだな……さてと、四人の分まで頑張るとするか」

「ん、了解」

 

 残りを真白達で出来る限り片付けるとする。

 ただ……数分が過ぎたところで、真白と光瑠、隆太は一体誰が彼女達にツッコミを入れるんかだとなる。

 

「もー! ちょっとひなたちゃん、くすぐったいよー」

「良いじゃないですか少しくらい……おぉ、柔らかい」

 

 なんて会話が繰り広げられる状況になっていた。

 位置的には真白の背後でそのやりとりは行われており、真白の向かいに座っている光瑠と隆太からすれからすれば、少し視線を上げると二人のやりとりが見えるわけだ。

 

「っ……!! ……っ!?!?」

「っ……!?」

 

 さっきからチラチラと見ては顔を赤くするを繰り返して、完全に挙動不審な様子の光瑠と隆太の二人に真白は思わず笑いそうになる。

 振り向きたくなるような騒がしさが後ろから続くものの、それをBGMにするかのように真白は黙々と仕事に没頭していった。

 由紀が先生に頼まれた手伝いももうすぐ終わりに差し掛かっていた。ほぼ半分以上は真白がやったものだが、四人の美少女が仲良くしている姿が目の保養所なったのももちろんある。でもそれ以上に誰かの手伝いをするのも人の助けになるのも真白にとっては苦じゃないのだ。

 

「ごめんね、ほぼ神原くんに任せちゃって、手伝ってくれてありがとう」

「あはは、すまない神原君」

「神原、ありがとうね!」

「んー、いーよいーよ。目のほ……見ていて楽しかったから」

 

 つい本音を言いそうになったが真白は見ていて楽しかった。

 

「それにしても神原くんがシュバババって、次々とプリント整理してるのすごいね」

 

 美少女四人の戯れを燃料に真白はシュバババっと、次々とプリント整理を処理したのだ。

 真白は運動や掃除などは苦手だが、細かい作業や整理整頓は得意だ。

 

 褒められている真白を見て、一人面白くない顔をしている者がいた。

 

 どうしてだよ……俺だって頑張ってるじゃないかと声を大にして光瑠は言いたい。

 なあ由紀、今キミのそばには俺がいるじゃないか! すぐ隣に座る俺を見ないでどうして神原ばかりを見るんだよ!

 自分でも醜いと言いたくなるほど、光瑠の嫉妬心が膨れ上がる。

 

 光瑠にとって真白は由紀との仲を邪魔する存在でしかない。

 由紀、光瑠、潤、隆太の四人は幼馴染で真白とは同じ中学だ。光瑠から見た真白はどこか頼りなく、オタクで勉強はできても運動はできなくこれといった特別なものはなく目立つような奴はなかった。男にしては色白で低い身長に光瑠程ではないが顔立ちは整っている。

 人付き合いが苦手なのか、自分から積極的に関わろうとはせずにいるが、誰かが困っていたり手伝いなどには自分から積極的に関わろうとしていたりはした。

 由紀が真白に構うのは単に親しい友人がいない真白に気を遣っているのだと光瑠は思い込んでいる。

 昔から由紀は行儀よく品行方正で成績優秀、それでいて儚い容姿で人目をひくのだ。年齢問わず男達から好かれるためストーカーに狙われたりと、由紀は変な男達に狙われやすいのだ。

 彼女を守らないといけない義務があり、由紀を助けてあげられるのは、幼馴染の俺だと光瑠は思っている。

 どうも光瑠は真白のことを悪い虫だと思い込んでいるらしいのだった。

 

 

 最後の追い込みをするかのように真白達は作業を終わらせて、片付けを終えた頃には光瑠以外のみんなが満足そうにしていた。

 

「作業を手伝うだけじゃなくて由紀ちゃんと潤ちゃんにヒナタちゃんともお話ができて楽しかったよ」

「本当ですね。私は普段部活があるのでこんな機会もそうそう取れないですけど、本当に楽しかったです!」

「私も紗希先輩とお話しできて楽しかったです」

「私も先輩と話せて楽しかったです。先輩、今度は私達で遊びに行くのはどうでしょうか?」

「それいいね潤ちゃん。私もみんなと遊びに行くのもいいかもしれないね」

 

 紗希とひなたや由紀に潤が満足してくれて良かった。

 今度は遊ぶ約束をしているようで、なんだか仲良く話をしていて尊いと真白は感じていたのだった。

 


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