プリンセスナイトの日常2

ーー四限目の授業が終わり、お昼休憩の時間になった。

 教室を見渡すと購買組はパンを買いに出て行き、弁当組は友人のところに移動して一緒に食べたり、外や屋上に移動して食べる者もいる。

 由紀は光瑠達のところに行き、ひなたは仲の良い友人のところに行った。

 

「真白、一緒に食おうぜ」

「んー、いいよ」

 

 玲二が弁当を持って真白のところにやってきた。普段は紗希がお弁当を作ってくれるが、今朝はセレナが作ってくれたのだ。

 お弁当を作ってくれる紗希に毎日感謝している。今朝、セレナが作ってくれたお弁当は栄養バランスを考えて作られている。

 早速「いただきます」言うとセレナに感謝しつつ、食べ始める。紗希に負けず劣らず美味しく、ゆっくりと咀嚼しつつ舌で味わっていく。

 うまい、と思っていると、その姿を眺めていた玲二がほうとどこか感嘆の声を漏らした。

 

「……真白ってうまそうに食うよなぁ」

「実際おいしいし」

「それは知ってるけど。ここまでおいしそうに食べてもらえると、四條先輩も作り手冥利に尽きるだろうな」

 

 今朝、お弁当を作ったのはセレナだが玲二には知らないことだ。

 

「そうだ。『アストラル』はどこまで進んだんだ?」

「んー……実はギルドを結成することになったんだ」

「へぇー、お前がね」

「ユキ、ヒナタ、セレナって子達と組むことになった」

「全員女の子なのか?」

「ああ……うん」

「ハーレムだな」

「言っとくけど下心はないからね。熱意に押されて結成することになったんだから」

「わかってるって、お前はそういうやつじゃないのは知ってるし」

 

 玲二も『アストラル』をプレイしていて時々、時間が合えば一緒にパーティを組むことがあった。ギルドを結成することを聞いて、面白そうに真白を見る。

 ギルドを結成することになった事を玲二に話した。

 

(あれ? ギルドを結成することになった人達と同じ名前だけど偶然かな。『アストルム』は国民的VRMMOだし、そのくらいの偶然が重なっても……)

 

「どうしたんだ由紀?」

「ううん、なんでもないよ光瑠くん」

 

 偶然聞いたギルドメンバーの名前を聞いて由紀は固まり、様子が変なことに気づいた光は由紀に呼びかけた。なんでもない風に装った。

 

(あれ? なんだかギルドを結成した人達の名前が一緒だけど偶然なのかな?)

 

「おーい。ひなたどうしたんだ?」

「あはは、なんでもないよ」

 

 ひなたも由紀と同様な反応になったが、なんでもないように装う。

 

「……なるほどねぇー。面白そうだし、俺も入っていいか? あまり頻繁にはログインできないけど」

「うーん……玲二、時間がある時でいいから『アストラル』のことで話したいことがある」

「オッケー、わかったよ。」

 

 男が真白しかいないので、加入だけでもしてくれるとありがたい。けど、玲二にも昴のこと【プリンセスナイト】について話そうと考えた。

 玲二には彼女がいて別の高校に通っている。なので前ほどログインはできないでいた。

 玲二は彼女をとても大切にしているので、彼女を優先でも構わなかった。

 お弁当を食べ終えて、次の授業は体育だ。

 次の授業は体育なので、真白と玲二はジャージに着替えて、グラウンドに向かうのだった。

 

(……空腹を満たした後の運動はきついな……。)

 

 ご飯を食べた後の体育は憂鬱だ。真白が運動が得意ではないのもある。神様から貰った能力のおかげで、身体能力と体力が上がっているのが分かる。

 とはいえ、運動神経が良くない真白が急に運動ができるようになったら、目立ちそうなので、目立つ様なことはしないと真白は思った。

 視線を移すと、ただいまグラウンドで走り高跳びをしているのだが、女子も体育でグラウンドを使っての授業らしくグラウンドには女子の姿もあった。おまけにニクラス合同なため、結構な人数がグラウンドに居る。

 あちらはあちらで陸上競技をしているので、待ち時間でこちらの体育を眺めている、といった感じだ。

 

「天草君頑張ってー!」

 

 基本は男女別の場所で授業があるので、女子がいると男子達がざわめいていたものの……女子達の視線の先には光瑠がいた。勉強もできて運動もできるので女子からも人気なのは知っている。他の男子的には面白くないらしく微妙に渋い顔をしている男子も一部いる。

 

「おーなんかあっちすげなぁ」

「さすがは天草くんだよね」

「聞いてもいいか?」

「なに?」

「お前は光瑠のことどう思ってるんだ?」

「んー……僕は別に天草くんのこと嫌いじゃないよ。真っ直ぐなところや正義感が強いところは嫌いじゃないし、好ましいと思っているよ」

「なるほどなぁ。妬んだり嫉妬はないのか?」

「なに、モテモテで羨ましいでござるーって言えばいいの」

「キャラじゃないな」

 

 ゲラゲラ笑っている玲二を半眼で見つつ、女子からの熱い眼差しや声援を浴びて爽やかな笑顔を浮かべている光を眺める。

 光を眺めた後、こっそりと辺りに視線を巡らせて見れば、人が沢山いても際立って目立つ容姿の少女達がグラウンドの端の方にいる。

 ちょこんと立っている由紀、潤、ひなたの三人に視線が吸い寄せられている男子も多くいて。一部の女子は潤の方に視線を寄せているのもいた。

 遠目ながらぱちりと目があって、気まずげに視線をさ迷わせれば、由紀がくすっと小さな笑みが浮かんだ。

 

 その向きが真白、というか男子達の集団に向いていたため、笑顔を向けられた男子達が「俺に微笑んでくれた!?」「いや俺だね」とざわついている。

 

「これはチャンスだぜ! いいところを見せれば草摩さんに……」

「天草ばかりにいいところを取られてたまるか!」

 

 笑顔一つでこうも湧き立たせるのは凄いといえばいいのか、ただ単純な彼らといえばいいのか。

 

「……単純だなぁ」

 

 同様な事を思ったらしい玲二がこぼすので、真白もつい笑った。

 

「んー、まあ内申点もあるしそれなりに僕らも頑張らないとダメなんだよねー」

「なんだ、真白も草摩さんに見られてはりきってるのか?」

「いや違うよ。もし興味があるって知られたらどうなるかわからないし、面倒ごとになるのはなるべく勘弁かなー」

「ま、それもそうか。お前はいいやつなのに光瑠もそういうことに気づいてくればいいのにな」

 

 彼女がいるのはいいぞ?と彼女持ちの自慢が始まりそうだったので「はいはい」と流した。

 この後、真白は加減をして普通通りの結果を残すことができた。自分の思い通りにコントロールができるのは驚きと戸惑いがあったのだった。

 

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