寝惚け噺
御子芝フユ
小話
私が朝目覚めて最初にすることは、愛用のメガネを探すことである。
ベッドで本を読みながら寝落ちしてしまうことの多い私は、寝ている内にメガネを外してしまうらしい。
たいがいは枕元に無造作に転がっている。適当に枕元を手探りすればすぐに見つかりはするのだが、そうでない時が大変だ。
何せ私はドの付く近眼で、メガネがなければ5cm先の新聞の文字も読めやあしない。
散らかりきった私の部屋の中で一度見失ったメガネを探し出すのは、鳥取砂丘で一粒の砂糖を見つけ出せと命じられるかの如き絶望を私に突きつける。
などと
そんな訳で私の今朝は絶望から始まった。
メガネ...メガネ...と呪詛のように呟きながら、寝惚けまなこで部屋中を漁る。
雑多に積み上げられた雑誌の山に手を突っ込むと、ギャッと奇妙な音がした。
手指の先になんぞ動くものの感触。
ネズミでも居たかと、そのままそれをつまんで、腕を引き抜く。
引き抜いた腕の先には…うーん?なんだろうこれは?
ド近眼の私の眼では、つまんだソレが何なのか判別がつかない。
ネズミか? ネズミはこんな形だったか? しかしジタバタと動いている。多分生き物だろう。
手を鼻先まで近づけてようやくそれを識別できた。
指の先には小人がつままれていた。
聞けばなんと私のメガネの精らしい。
私のメガネの雑な扱いに、いい加減頭にきて家出を決行したとのこと。
そいつは大変に申し訳ない。
思わず謝ってしまうと今までの不満が爆発したのか説教大会が始まった。
曰く、「いい歳して、作家だのアーティストだのと夢見てんじゃねえよ、とっとと目を醒ませ」
言われてはたと、気が付いた。
なんだ夢か…
そう呟いたら小人にしこたま
イタッっと声をあげた所で目が覚める。
小突かれた額をさするとそこにメガネを発見した。
寝惚け噺 御子芝フユ @dongmiko
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