第12話
ーーーーーー
(ケインは一体どういうつもりなんだろう)
「カミル、どうかしたのか?」
「いえ……何でもありません」
私は慌てて笑顔を作ると誤魔化すように答えた。そして話題を変えるためにもアベルさんに質問をしてみる事にした。
「そういえば、ケインとはどういう関係なんですか?友達とか?」
「いや、違うぞ」
と彼は即答する。
「え?じゃあ何なんですか?」
と私が聞くと彼は少し考え込んだ後、口を開いた。
「そうだな……強いて言えば『ライバル』かな?」と言った。
「はあ、ライバルですか」
「そう……ライバル」
「なるほど……」
私は納得して頷く。それから暫く沈黙が続いた後、アベルさんが口を開いた。
「そういえば、カミルは『最近』何かあったか?」
「え?いや……特に何も無かったですよ」
と私は答える。すると彼は少し寂しげな表情を浮かべて言ったのだ。
「そうか……なら良いんだ」
と言うと再び黙り込んでしまう。しかしそんな彼の様子を見て私は違和感を覚えたのである……。
(あれ?なんかおかしいな……?)
まるで何かあったかのような感じ。
「アベルさん」
「なんだ?」
「もしかして何かあったんですか?」
と尋ねると彼は一瞬動揺した様子を見せたがすぐに冷静さを取り戻すと言った。
「いや、特に何もないぞ」
(嘘だな……)
と直感的に思ったがあえて触れない事にしたのである……。何故ならこれ以上聞いても答えてくれなかっただろうし、それに私自身もあまり詮索されたくない事だったからだ。
「そうですか……」
と答える私に対して彼は言った。
「……カミルは何か悩み事でもあるのか?」
「いえ、特には無いですよ。」
「本当か?」
「はい、大丈夫です」
と私は笑顔で答えた。するとアベルさんは安心したような表情を浮かべたのである……。それから私達は無言のまま歩き続けたのであった……。
ーーーーーー
その夜の事だった。突然私のスマホが鳴り出したのだ。画面を確認すると『ケイン』という文字が表示されていたので嫌な予感がしながらも電話に出ることにした。すると彼はいつも通りの明るい口調で話しかけてきたのだった……。
『やあ!カミル!』
私は呆れながら返事をする事にしたのである……。
「ケイン、何の用ですか?」
『実はカミルにお願いがあるんだ!』
「お断りです」
『まだ何も言ってないよ!?』
「どうせロクでもない事でしょう?」
私はため息をつくと再び言った。すると彼は嬉しそうに答える。
『よく分かったね!流石は僕の彼女だ!』
(だから違うって……)と心の中でツッコミを入れつつ私は話を続ける事にした。
「それで?何をさせるつもりですか?またキスでもするつもりですか?」
『それもだけど』
それもだけどってあんた。
「じゃあ一体何をさせるつもりですか?」
私が尋ねるとケインは待ってましたと言わんばかりの表情で答えた。
『僕とデートして欲しいんだ!』
「お断りします」
私は即答する。すると彼は落ち込んだ様子で言ったのだ。
『そこを何とか頼むよ……』と……。しかしそれでも私は断る事にしたのである……。
「嫌です」
と答えると
『頼むよ!カミル。お願い!お願い!僕とデートして』
「もう!いい加減にして。電話切るよ」
「待って!分かった!デートしてくれたらもうカミルにつきまとわないよ」
ケインは必死に訴えてきた。正直言って迷惑だったのでこの提案はありがたかったのだが……。
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