第11話

「いや、『はて?』じゃなくてですね……」

私は呆れながらため息をついた。

「そもそも貴方とお付き合いする気はありません」

するとケインは驚いた様子で言った。「どうしてだい?僕はこんなにカミルの事を愛してるのに!」

(いや、知らないし……)

と心の中でツッコミを入れる私。しかし彼は諦めない様子で再び詰め寄ってくると言ったのだ……。

「カミル!僕と一緒になろう!大丈夫!幸せにするから!」

(この人本当に話を聞かないな……)

「だからですね。男同士で暮らしたいということですよね?」

「…………はて?」

「いや、『はて?』じゃなくてですね……」

「カミル!僕は本気だよ!」

「いや、だからですね……」

私は頭を抱えながら考える。そして一つの結論に至ったのである……。

(もう駄目だ……)

と諦めた瞬間だった。その時である……部屋の扉が勢いよく開かれたのだ!そこに現れたのはなんとアベルさんだったのだ!!彼は怒りの形相でケインに詰め寄ると言ったのだった。

「おい!貴様!カミルに何をした!?」

「いえ……私は特には………あ……『キス』されましたね」

「な……!?……なに!?」

「いや……『キス』されてしまいました……」

「貴様ぁぁああぁぁああ!!!」

ケインに詰め寄るアベルさん。

「お、落ち着いてください!アベルさん!」

と私が声を掛けるも聞く耳を持たない様子である。そしてそのまま殴り合いの喧嘩を始めてしまったのだ!私は慌てて止めに入る事にしたのだが……。

「二人とも落ち着いて下さい!!」

私の声は二人に届かなかったようだ……。

結局この後、騒ぎを聞きつけた衛兵達が駆けつけるまで2人は殴り合っていたらしい……。

「この人達は全く」

「カミル、大丈夫か?」

「はい……なんとか」

私は疲れた表情で答える。

「そうか、それは良かった」

「アベルさんこそ大丈夫ですか?」

「ああ、俺は大丈夫だ」

そう言うとアベルさんは私の頭を撫でてきた。

(もう子供じゃないんだけど……)

と思いつつもされるがままにされていたのだった……。その後暫くして私達はケインを衛兵に引き渡して帰る事にしたのである……。

そして帰り際にケインは私に手を振っていた。私も仕方なく手を振り返すと彼は嬉しそうに笑っていたのである……。私はそれを見て少し不安になったが今は考えない事にした……。


「カミル、今から一緒に食事でもどうだい?」

「いえ、遠慮しておきます」

「どうしてだい?僕が奢ってあげるよ?」

「いえ、結構ですので……」

私は冷たくあしらう事にした。すると彼は更に詰め寄ってくると言った。

「じゃあせめて連絡先だけでも教えてくれないかい?」

ケインはそう言うと私の手を摑みながら懇願してきたのだ。私は困った表情でアベルさんの方を見たが彼も呆れている様子だったので助け舟を出すのは諦めたのである……。

「分かりました!これが連絡先です。ですけど!あまり連絡とか頻繁にはしないでくださいね!」

と言ってスマホの連絡先を教える。

「ありがとう!これでいつでも君と繋がれるんだね!」

「はぁ……まあ、そういう事になりますかね」

私はため息をつく。そしてアベルさんと2人で帰路についたのだった……。

「カミル、本当に良かったのか?」とアベルさんが尋ねてくる。

「はい、大丈夫です」

私は笑顔で答えた。すると彼は少し安心した様子で言った。

「そうか……」

そして私達は家路につくのであった……。

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