第10話

彼はあっさりと答えた。私は続けて質問する事にした。

まず最初に聞いたのは名前についてである……。彼はケインと名乗ったがそれが本名かどうかは分からないし、偽名を使っている可能性もあるからだ……。

ケインは私の腰に手を回す。

「ちょ、ちょっと何するんですか?」

「いや、可愛いなって思ってさ……」とケインは答える。そしてそのまま顔を近づけてくると耳元で囁いたのだ……。

「ねえ、キスしてもいいかな?」と……。

私は慌てて彼を押し退ける。

顔を赤くする私。

「な、何するんですか!?」

「いや、可愛かったからつい……」とケインは悪びれた様子もなく言う。私は少しイラッとしたが冷静さを保つように努力して言った。

「あの……私これから行く所があるんで……」

「じゃあ一緒に行こうよ!」とケインが言うので仕方なく了承する事にしたのである……。

(どうしてこうなったんだろう?)と心の中で思いながらも私は彼と一緒に街を目指す事になったのだった……。

道中、私はケインに質問してみた。

「ケインはなんで一緒に来るんです?」

「うん?カミルが可愛いから」

(聞いた私が悪かった)


「ケインはどうして冒険者になったんですか?」

「うーん……特に理由は無いかな。強いて言えばお金を稼ぐ為だよ」

「そうなんですか……」

「カミルはどうして冒険者になったの?やっぱり生活の為かい?」

私は正直に答える事にした。

「いえ、私の場合は趣味みたいなものですね」

すると彼は驚いた様子だったがすぐに納得したように頷いた。そして今度は逆に彼が質問してきたのである……。

「カミルは何か得意な事はあるのかい?」


「はい、私は魔法が得意ですよ」

「へぇ……そうなんだ」と彼は意外そうな表情を浮かべる。

「私が使えるのは雷魔法と風魔法の2つですね」

「凄いね!他には何ができるのかな?」

「後は治療魔法も使えますし、他にもいくつかありますけど……」と答えるとケインは目を輝かせながら喜んだ様子で言った。

「それは凄いよ!」と言うと私の手を握りながら言うのだった……。

「もし良ければ今度一緒に依頼を受けてみないか?」


「え?いや、ちょっとそれは……」と私は戸惑いながら返事をするが彼は構わず続ける。

「僕は強いし、それにカミルを守ってあげられると思うんだ」

「えっと……その……」

私はどう答えればいいか分からなくなり黙り込んでしまう。するとケインは更に顔を近づけてくると言ったのだ……。

「ねえ、キスしてもいいかな?」

「へ?」

ケインはそう言うと私の唇を奪ったのだった……。


ーーーーーー


目が覚めると見知らぬ部屋に居た。周りを見回すと豪華な家具が置かれている事が分かる。

「ここは」

確か、ケインにキスされた所までは覚えてるんだけど。

「やあ、目が覚めたみたいだね」

ケインが部屋に入って来た。

「カミルは今日から僕の彼女だ」と言って微笑むケイン。

(何を言っているんだこの人は?)と私は思ったが、とりあえず現状を把握するために質問をしてみたのだ……。

「あの、ここはどこなんですか?」

すると彼は笑顔で答えるのだった……。

「ここは僕の屋敷だよ」

私は絶句した……。どうやら本当に誘拐されてしまったようだ……。

「はあ……あのですねケイン。私は」

「皆まで言うな!カミル!君は僕の彼女」

「だから……ですね……彼女ではなく……『彼氏』になるのでは?」

「…………はて?」

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