第5話
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冒険者組合の受付嬢である彼女は、眼鏡を外した青年を見て驚いていた。何故なら彼の魔力が異常なまでに高い事に気付いたからである。
(凄い魔力量だわ……)
それが私だ。
「さて、次はもう少し強い敵と戦ってみるか……」
私はそう決めると更に奥へと進んで行くのだった……。
「流石にこの辺になってくるとしんどくなってきたな……」
私は足を止めると周囲を見渡す。そこは先ほどまでとは少し違う景色が広がっていた。木々や草花が生い茂っており、地面もぬかるんでいたりと歩きにくい環境になっていたのだ。更には霧が立ち込めており視界もかなり悪かった。
(これは少し厄介だな……)
「だが、ここまで来たら引き返す訳にもいかないな……」
私は覚悟を決めると慎重に進み始めた。暫く進むと前方に何かの影が見えた。私は目を凝らしてよく観察する事にした。するとそこには巨大な熊が佇んでいたのだ。その大きさは3メートル程はあるだろうと思われる巨体だった。
「これはまた……なかなかの大物だな……」
私はそう呟くと鞄から魔法石を取り出し魔力を込めた。すると魔法石が輝き始めると同時に周囲の温度が急激に上昇し始めたのだ。そして次の瞬間、
「くらえ!」
私は魔法を放った。すると巨大な熊を中心に炎の渦が巻き起こる。そしてその炎は瞬く間に広がり周囲の木々を焼き尽くしてしまったのだ。
「ふぅ……」
私は一息つくと、焼け野原となった周囲を見渡す。そして改めて自分の力に恐怖を感じたのだった……。
「これは流石にやり過ぎたか?」
私がそう言うと背後から声が聞こえてきた。
「いいえ?そんな事はありませんわ」
振り返るとそこには美しい女性が立っていたのだ……。
「君は一体誰なんだ?」
私は彼女に尋ねた。すると彼女は微笑みながら答えた。
「私はこの森に住む妖精の1人ですわ」
「なるほど……そういう事か……」
私は納得した様子を見せると、今度は逆に私から質問をしてみた。
「それで、どうしてこんな場所に来たんだ?」私がそう聞くと彼女は答えた。
「それは勿論貴方に会いに来たからですよ?」
そう言って私の腕に抱き着いてくる彼女を見て困惑する私であった……。
ーーーーーー
(これは一体どういう事だ?)
「ねぇ、私達の子供を産んで頂けませんか?」
私は困惑していた。何故なら突然現れた彼女にいきなり求婚されたのだから……。
(今この女、私に子を産めと言ったか?)
しかも彼女は私に抱き着いたまま離れようとしない。どうしたものかと思い悩んでいると彼女は更に追い打ちをかけるように私を見つめてきた。
「旦那様、貴方はとても美しいですわ」
そう言って私の頬に触れてくる彼女の手は冷たかったが何故か心地よかった。しかしいつまでもこうしてはいられないと思い私は彼女を引き剥がす事にしたのだが……。
「はいはい」
「むぅ……仕方ありませんね……」
彼女は不満気な様子だったが素直に離れてくれたので一安心する。そして改めて彼女と向き合う事にしたのだが……。
「旦那様、どうか私と結婚してください」
「いや、待ってくれ。そもそも君は何者なんだ?」
私は思わず突っ込んでしまったが、彼女は特に気にした様子もなく答えてくれた。
「はい。私はこの森に住む妖精の1人です」
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