第2話

男性は戸惑いを見せていたが、私はそのまま続ける。

「お礼と言ってはなんですが、依頼の達成料は全て貴方に差し上げますのでどうでしょうか……?」

私がそう言うと男性は少し考えると口を開いた。

「……わかった。案内しよう」

「ありがとうございます!」

私は男性の承諾に安堵するとお礼の言葉を述べた。

「では、早速向かいましょうか?」

「あぁ……」

こうして私は男性と共にギルド会館へと向かうことになった。

私は依頼書を片手に冒険者組合の受付カウンターへと歩いていく。そして依頼書と冒険者カードを提示した。

「この依頼を受けたいのだが……」

私がそう言うと受付の女性は笑顔で対応してくれる。

「はい!かしこまりました!」

そう言って女性はテキパキと手続きを進めてくれた。そして数分後、無事に手続きが完了したようだ。

「これで手続きは完了です!依頼頑張ってくださいね!」

「あぁ、感謝する」

私は女性にお礼を言うとその場から立ち去ろうとしたのだが、後ろから声をかけられた。振り返ると受付嬢が笑顔でこちらに向かって手を振っていた。

「どうかしましたか?」私は不思議に思い尋ねてみる。すると彼女はこう答えた。

「いえ、その……もし宜しければまた来てくださいね」そう言って彼女は私に笑いかけてきた。

「あぁ……機会があればまた来るよ……」

私はそう答えると冒険者組合を後にした。

「さて、これで依頼も引き受けた事だし早速向かうか」

私は鞄に荷物を詰め込むとすぐに目的地へと向かう事にした。

「さて、まずは中央街に向かうとしよう」

私はそう呟いて街の中央にある噴水広場を目指して歩き出した。

「ふむ……ここが中央街か……」

私は目的地であるギルド会館の前に到着すると周囲を見渡す。そこには大きな建物が幾つも建ち並んでおり、多くの人で賑わっていた。

「まずは、依頼人であるギルド長に会いに行くか」

そう呟くと私は受付の女性に言われたギルド会館の最上階へと向かった。そして最上階に到着すると重厚な扉をノックする。すると中から男性の声が聞こえてきた。

「どうぞ……」

「失礼します」そう言って私は部屋へ入るとそこには眼鏡を掛けた細身の男性が椅子に座っていた。男性は私を見ると少し驚いた様子を見せたがすぐに笑顔になった。

「おや?貴方は先程の……」

どうやら男性は私を覚えていてくれたらしい。私は男性に向かって軽く会釈をした。

「どうも。先程はお世話になりました」

「いえいえ、お気になさらずに……」

男性は笑顔で答えると私に椅子に座るよう促してくれたので、私はお言葉に甘えて着席させてもらった。

「ところで……ギルド長とは貴方様でよろしいのでしょうか?」私が質問すると男性は頷きながら答えてくれる。

「えぇ、僕がこのギルド会館のギルド長を務めています。名前は『アベル・フォン・クリューゲル』と言います」

「私は『カミル』と申します」


「はい、よろしくお願いします」

そう言って私達はお互いに握手を交わした。

「それで依頼内容なのですが……少々面倒ではありますが、ご説明させて頂いても宜しいでしょうか?」

私は念の為に確認をする事にした。するとアベルさんは快く承諾してくれたので、私は依頼内容について詳しく説明した。

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