私の眼鏡は特注品

みなと劉

第1話

私の眼鏡は特注品である。そう特注品なのだ。

しかし、この眼鏡は私が幼少の頃に大病を患い、その治療費を捻出する為の資金が主な理由で購入された物なのである。

つまりこの眼鏡は、言わば私の実費で購入したものと言っても過言では無いのである。

故に私はこの眼鏡に愛着があったのだ。

しかし、そんな愛着のある眼鏡が今、無残にも壊れてしまったのである。

「あ……あぁ……私の眼鏡……」

「お、おい!大丈夫か!?眼鏡は、そんなに大切なものだったのか!?」

私の突然の悲壮感に溢れた様子に驚いたのか、隣の男性は心配そうに声をかけてくれた。

「いや、大丈夫です……」

そうだ。眼鏡などまた作れば良かろう。たかだか眼鏡の本体だけではないか……。

そんな気持ちを自分に言い聞かせて私は起き上がると、男性に向かい合った。

「まぁ、次を買うまでの間はこれで凌ぎます……」

そう言って私は自分の鞄から予備で持ち歩いていた度の入っていない伊達メガネを取り出した。

「なんだ。そんなものがあるならさっさと出せば良いものを」

そう言って男性は鼻で笑ったが、私にとってはこれは簡単に出せるようなものではないのである。

何故ならこの伊達メガネは……

「これは、私の大切な思い出の眼鏡なんです……」

そう。この伊達メガネは私の初恋の相手から貰った物なのだ。

その初恋相手は私が大病を患った際に献身的に看病してくれた女性で、私はその女性に対して淡い恋心を抱いたのだ。

「その思い出の品を簡単には出せないんです……」

「ふむ……そうか……それは悪かったな」

そう言って男性は頭を下げて謝ってくれた。

私は少し恥ずかしい気分になったが、正直にその初恋の相手がくれた物だと伝えると、男性は納得したような顔をしていた。

「まぁ、そんな事情なら仕方あるまい」

「ありがとうございます……」

私は男性にお礼を言うと、再び自分の鞄から眼鏡ケースを取り出した。

そして中から予備の伊達メガネを取り出すと、それを装着して一息つく。

「ふぅ……」

一息つくと私は気持ちを切り替えて、この街に来た目的を思い出す。

(いけない、いけない……とりあえず今は依頼をこなさねば……)

そう自分に言い聞かせると、私は隣で何やら難しい顔をして考え事をしている様子の男性に話しかける。

「あのーすみません……」

「む?どうしたんだい?」

私に呼びかけられた男性は意識を戻して返事を返してくれた。

「少しご相談があるのですが宜しいでしょうか?」

「ふむ?あぁ構わないよ」


「ありがとうございます……実は、私はこの街には今日来たばかりで、右も左もわからない状態なんです……」

「そうなのか?それなら中央街にあるギルド会館に行くといい。あそこなら色々な手続きを行えるから便利だ」

「わかりました。しかし、私一人ではギルド会館に辿り着くことが難しいのです……そこでお願いがあるのですが……」

私がそう言うと、男性は少し困惑した様子で尋ねてきた。

「お願いとは一体なんだ?」

私は意を決して男性に頼み事の内容を伝える。

「もし宜しければ、貴方様に私のギルド会館への案内をお願いしたいのですが……よろしいでしょうか?」

私はそう言って男性に向かって頭を深々と下げた。

「いや、しかし……」

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