魔導師のめがね!譲ってください。

蘇 陶華

第1話 僕は、めがねで、夢を叶える

一つ、僕の容姿について、伝えなくてはならない。僕は、捨て子だったせいで、妖の姫、紗々姫の侍従になった。本当は、侍従なんかじゃなく、姫遊び相手。正確には、おもちゃとして与えられたんだ。姫のお供は、大変で。ただの我儘なら、我慢できるけど、人としての行動ではない為、僕を悩ませた。姫は、まぁ、見た目は、まあまあである。そこそこモテるのかな。普段、見るには、綺麗な顔立ちだが、ちょっとした拍子に、人間でない姿に変わってしまう。僕は、それが、恐ろしい。両橋まで、目一杯に裂けた口の中で、長い舌が、ピチピチ弾けている。恐ろしくて、恐ろしくて。いつ、食べれるか、わからない。眠れない日が続いていた。僕は、目が悪い。ちっちゃい目が二つ、申し訳程度に、ついている。そして、目が極端に悪い。よく見えないからこそ、紗々姫の侍従に、ちょうど、良かったのだろう。姫の恐ろしい姿を見なくて、済むのだから。そんな姫が、僕の目にもはっきりとわかるくらいに笑顔になる事がある。

「瑠璃光様!」

大陸から来た魔導師 瑠璃光が大のお気に入りだ。僕は、気に入らない。大きな瞳で、見つめられるとドキドキして、動けなるそうだ。僕は、姫に睨まれると動けなくなるが、それとは、少し、違うらしい。僕には、見せない笑顔が、瑠璃光には、向けられる。僕が、物心ついた時から、見つめていた姫は、大陸の妖怪を好きなのだ。

「どうしたら?どうしたら?姫に、見つめてもらえますか?」

「それはな」

お供の式神、紫鳳に聞いた。瑠璃光に聞くのは、腹が立つが、分身なら、問題がないだろう。

「その見えない目を見えるようにしたら、どうか?」

きっと、紫鳳は、よく、姫を見ろ!やきもちを焼くには値しない事を言いたかったのだろう。その時の僕には、わからなかった。

「よく見える物?それは、どこにありますか?」

「そうだな・・。三華の塔なら、あるんじゃないか?」

「三華の塔?」

僕は、ゴクリと唾を飲んだ。あそこは、姫の物置ではあるが、妖怪の住まう塔でもある。目が良くなる物を探しに行くには、覚悟がある。

「目がよく見える物?」

「目玉だよ。目玉・・」

僕は、瑠璃光に勝つ為に、三華の塔に、目玉を探しに行く事になった。目が良くなったら、魔導師になって、紗々姫の前に立つんだ。キラキラした目で、僕を見つめるがいい。僕は、必死になって、三華の塔に入っていった。紫鳳が心配して追t来てくれたが、狙っていた目玉は、どこにもない。

「そんなに、姫によく見られたいか?」

「ずっと、そばについているけど、一度も、キラキラした目で、見つめられた事がないんです」

「そんなに、紗々姫を気にいっているのか?」

紫鳳は、驚いたが、僕は、頷いた。

「外の世界を知らないので」

「そうか・・・」

紫鳳は、しばらく、考えていたが、掌から、何かを取り出し、僕の顔に掛けてきた。

「これが、結果的によくなり事かわからないが・・・」

僕の視界が、ぱあーっと明るくなった。今まで、白っぽく、霞んでいた世界がはっきりと見えてきた。

「これは?」

目の前には、女性の様な美しい男性が顔を覗かせていた。

「知らなければ、幸せという事がある。本当に、見える方がいいんだな」

紫鳳は、困った顔をしていた。それは、僕が、この小さな目の方が幸せと言っている様な気がした。

「僕は、見える方が幸せだと思っていました。違いますか?」

「紗々姫のそばにいるなら、見えない方が幸せだと思うよ。選ぶのは、有だ」

見えない方が紗々姫のそばに居られる。キラキラした目を剥かられる幸せもある。僕が、本当に、望んでいるのは・・・。

「このままで・・・いいです」

僕は、見えなくてもいい。めがねをかけたら、魔導師の様になれるかもしれない。だけど、紗々姫のそばにいられるのなら、このままでいいや。この時の僕には、紫鳳が、紗々姫の真実の姿を知ったら、怖がると思って、止めた事を知らなかった。

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