サイドストーリー 勇王ヴァスタレオン誕生秘話 第1話

ここはとある平地


無数の魔物の死体がゴロゴロしている中で切り株に腰を下ろして寛ぐ青年


そんな彼に声をかける男


「ヴァスタレオン様…探しましたよ!ここにいらしたのですか?」


「ああ…なんとか魔物を壊滅させる事に成功したようだな」


「いやはや…これだけの魔物を倒して息一つ乱さないとは流石ですね」


「ラディエス…この勝負は引き分けで良いか?数が多すぎて数え切れないからな」


「どちらが多くの魔物を倒せるか…ですね?」


「思っていたより敵の数が多くて途中までは数えていたがそんな余裕が無くなったからな」


「ですよね…でも腕を上げられましたねヴァスタレオン様は…一国の王子にしておくのは惜しいくらいの戦闘能力は戦士顔負けですよ!」



この2人は若かりし頃の勇王ヴァスタレオンと騎士団長ラディエスである


とある戦場で魔物との戦いを終えて一休みしていた


彼等は幼い頃から共に戦い、王子と近衛兵を超えた仲であった


今回はどちらがより多くの魔物を倒せるか競っていたようである



城に帰還すると父であるエアウィング王国国王陛下に報告するのだった


ヴァスタレオンは戦う事が好きで戦場では王子であるにも関わらず最前線で戦うのであった


ラディエスはこの頃はまだ近衛兵であった


ヴァスタレオンが国王に就任した時にラディエスは騎士団長に任命されたのである


戦うのが好きな為にヴァスタレオンは婚期が遅れたようである



時は流れ王として城下町を見回っていたある日の事


何処からか悲鳴が聞こえた


慌てて悲鳴の聞こえた方向に向かうと窓枠に捕まりぶら下がってる若い女性の姿があった


「あのままだといつ落下するかわかりませんよ!」


ラディエスがそう言ってる間にヴァスタレオンは女性の元へ向かっていた


「もう…ダメ…」


女性の手が窓枠から離れたその時…地面に叩きつけられる直前にヴァスタレオンが受け止める事に成功した


「怪我は無いか?」


ヴァスタレオンがそう聞くと女性は静かに頷いた


安堵していると少し年老いた女性が駆け寄ってきた


「良かった…娘を助けていただいてありがとうございます!」


「間に合って良かったよ…しかし何故あんな場所に?」


「実は窓の修理をしようとしていてバランスを崩して落ちそうになって咄嗟に窓枠に捕まったんです…」


「窓の修理なんて男にさせれば良いじゃないか」


「うちは父はこの間の戦いで亡くなり兄は城勤めの兵士なので家には男手が無いんです…なので私が代わりに…」


「君の父親の名前は?」


「ガドルファー・ユーレストです」


「そうか…君はガドルファーの娘だったのか」


「父をご存知なのですか?」


「まぁね…彼は優秀な兵士だったよ…惜しい男を亡くしたものだ」


「あの…それよりもそろそろ下ろしてもらえませんか?」


ヴァスタレオンは女性を抱えたまま話をしていたのだった


「これは失礼した!これからは無理せずに近所の男性に頼むようにするんだよ」


「はい…」


「それと君の名前は?」


「リリディアナと言います」


「良い名前だな…ではまたな」



「ヴァスタレオン様…何をお考えですか?」


「ん〜彼女を私のお付きの侍女にしたいと思っている」


「本気ですか?」


「もちろん!早速手配してくれないか?」


「…言い出したら聞かないから…」


「何か言ったか?」


「いいえ…わかりました」



こうしてヴァスタレオンはリリディアナを自分のお付きの侍女にする事にするのだった

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