序章 特別な夜に出会い⑤
数時間後。
リザは、王宮のどこかもわからない部屋に一人でいた。
身の置き所のない
「あのぅ……、もうそろそろ帰ってはいけないのですか?」
黙ったままの女官に、やっとの思いで
一人になると、部屋の広さと暗さが押し寄せてくる。
昼間の儀式のことはほとんど覚えていない。ちらりと見た男の金緑の瞳と深い声に、なぜかリザは一瞬の好ましさを覚えたが、今はニーケとオジーにひたすら会いたかった。
「ニーケ……」
大きな寝台の上で、リザはたった一人の友人の名を呼んだ。とても
リザは後で
彼女はこの場所が
「私のことなんて、誰も知らないし、きっと
自分を
「ニーケ? ニーケなの?」
自分に会い来る者など、この世に一人しかいない、そう思ってリザが声をあげた時。
「ニーケとは?」
暗い
昼間と同じ声だ。そのことにリザはなぜか少し安心し、勇気を出して答える。
「ニ、ニーケとは、私の
「侍女で友だち?」
男は不思議そうに首をひねっている。まるでリザが
「はい。すっかり
「……ええと、もしかして
「はい。ニーケならきてくれると思って……知らないところで、一人で
リザの答えに男が黙り込む。
「あ、あの?」
リザは急に怖くなった。
自分がなにかひどい
「ごめんなさい、本当にごめんなさい。私、何も知らなかったのです。でも、もう帰りますから、あなたはゆっくりここで休んでください」
リザは男の横をすり
驚いて
「お待ちください殿下。その
あっという間に、リザはエルランドに
その腕は大きくて
リザは自分だけでなく、エルランドも儀式や
前髪の下の目はやっぱり
「あなたもこの部屋で寝るのですか?」
思わずそう尋ねていた。エルランドは目を丸くしている。
「……殿下、あなたは」
「殿下ってなんですか? 私の名前はリザです」
「ではリザ姫」
「リザです」
今までほとんど
「わかりました。では失礼して、
「……はい。どうぞ」
「そして、申し訳ありませんが、
「どうぞ、
頭を下げる男に、リザも正直に伝えた。
「ではお
エルランドは笑った。笑うと厳しい瞳が柔らかくなり、リザはまた少し力を抜いた。
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