序章 特別な夜に出会い②
「リザ様、
「こんなカラス色の髪、梳かしたって変わらないわ。長さだってないし」
「まぁ、そんなことをおっしゃって。こんなに
リザは、王宮の奥にある
小さな離宮は、かつては美しかったのだろうが、長く人が住まず、手入れがされていないために
第四王女のリザは、父王の六番目の子にして最後の子として生まれた。
離宮で暮らす理由は、母の身分があまりに低かったからだ。母が生きていた
そしてリザが七歳の時に母は病に
そして、リザが十歳の時に老いた父王も亡くなり、
そしてリザは一人になった。
離宮には
王宮からは一年に一度、大きな行事である秋の園遊会に来るように、との伝言が届けられる。王女としてではない、召使として
兄王ヴェセルは、リザを無視したし、すぐ上の姉王女ナンシーは、
お前はカラス、
父が亡くなって四年。
十四歳になったリザは、時折王宮から届くわずかな品だけで暮らしている。貧しくとも
それなのに。
夏の終わりのある日、絵が得意なリザが水のない
「リザ様! お城からのお
見習い庭師のオジーの後ろに、立派な服装の男性が立っていた。ニーケも
「ご
使者はびっくりしているリザに、申し訳ばかりの辞儀をすると、そう言った。
筆頭侍従とは、騎士や下級貴族がその任を
メノムは四十がらみの痩せた男で、眼鏡の下からは
「では、お伝えいたします。『二日後、そなたは騎士エルランド・ヴァン・キーフェル
メノムは、リザを
「リザ様! ご結婚ですって! おめでとうございます!」
背後で同じように固まっていたニーケが
「……よくわからないわ。それっておめでたいの?」
リザは
「きっとそうですよ! 私のいとこが結婚した時、
「知らない。お父様がお亡くなりになった時、兄上に口をきくなって言われたし」
父の葬儀の際は雨が降っていた。リザは拝堂に入ることは許されず、ずぶ
「多分兄上は、私を
部屋に戻ったリザは髪を
「だって私はここで、一生飼い殺しの身なんだもの……」
ニーケは何も言えなかった。リザの言葉は
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