第一章②
「一鶴組のやったことは許しがたいが──それだけ彼らも
「
輪廻は胸に手を当て、
「失礼します」
よく通る男の声に、冷や水を浴びせられる。横目で板の間の方を見ると、紺色のシャツに深いブルーのネクタイを締め、真っ白なスーツを身に
「ああ
「いえ、とんでもないです」
──男の名は千切
どこの馬の骨とも分からない人間をなぜ相談役に? と組内が
輪廻たち
それをどこからともなく現れた
不満をあからさまに正太郎にぶつける幹部もいたが、正太郎は「たまにはこういうのも面白いだろう?」と
(親父の気まぐれだけとは、思えないんですよねえ)
正太郎のことだから全て織り込み済みなのだろうが、輪廻としては面白くない。そういうわけで密かに
そしてこの男を呼びつけたということは──
「輪廻。今回は千切と
ああ、やっぱり。
予感的中。最悪だ。どうしてよりによって、親父はこの男を相棒につけようと思ったのか。心の中で思いっきり舌打ちをするが、正太郎の手前、笑顔を作って快く応じる。
「
「こちらこそ。
千切は口元だけで微笑み、
「ふたりとも、
「それはもう。仲良くしてくださいね、叔父貴」
「ええ、こちらこそ」
千切が立ち上がり、
「では、早速昨日の現場へ叔父貴を案内して来ます。叔父貴、参りましょう」
「ええ。少し準備があるので待っていてもらえますか? すぐに行きますので」
「もちろんです。では
正太郎へ一礼し、ふたりは部屋を出た。
「……本当に、常影ちゃんと輪廻ちゃんを一緒にしちゃったのねえ」
ふたりが出て行った後、紬が正太郎の
「あのふたりには、組の柱になってもらいたいからねえ。今のうちに親交を深めてほしいんだよ」
「ふふ、そうね。きっとあの子たち、気が合うわよ」
紬が正太郎を見上げ、くすくすと笑った。
#コンパス 戦闘摂理解析システム 糸廻輪廻、虚々実々 蜘蛛と蜥蜴の不協和音 紅原 香/角川ビーンズ文庫 @beans
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