第一章①
かつては都内有数の
今では
一見こぢんまりとした日本家屋だが、そこかしこに
「ただ今
「おかえり。ずいぶんと
その横には、
男は蜘蛛縫組三代目組長、蜘蛛縫正太郎。女はその妻の
先代までは他団体との
そして、都内に事務所を構える三大組織と
薬物や武器の密輸などに手を出すことを一切禁じたが、組の経営は傾くことなくむしろ安定している。
フロント企業で収入を得ているという話だが、
正太郎の容姿は、輪廻が十数年前に
ともかく、全てにおいて
「少々、小バエ退治をしておりまして。最近暑くなったせいか、あちらこちらで湧くようになって困りますね」
輪廻がいかにも
「お前の【能力】の
正太郎が目を細めて笑う。
──この世界には二種類の人間がいる。【能力】を持つ者と持たざる者。
いつから【能力】を持つ人間が現れるようになったかは、定かではない。遺伝性はなく
多くは思春期を境に【能力】が
「消毒は定期的に行っているつもりなんだけどねえ、
正太郎が
「カタギさんが、クスリ売りをやるようになってしまいましたからねえ。最近はSNSでの取り引きが
「そっちも頭が痛いところだね。カタギとはいえ、ウチのシマでクスリは
「ええ。そちらもなんとかしないといけないのですが──カタギさんにたかる小バエの方が、どうも匂うんですよねえ」
輪廻はクンクンと鼻を鳴らしてみせた。
ここのところ、蜘蛛縫組のシマで
というのも、この数ヶ月で素人売人の数が倍増しているのだ。しかも学生や会社員など、この世界とは
トラブルの種になりかねないため、蜘蛛縫組でも若衆による見回りを増やして、声かけを行っている。
しかし遠回しに注意するとおとなしく立ち去るが、数日後にまた同じ場所に戻って素知らぬ顔で密売を続けるのだ。
この世界の人間が相手であれば話は簡単なのだが、カタギに手を出すわけにはいかないので、ほとほと困り果てているというわけである。
「五組長会議でも議題に上っていたね。他のシマでも同様の事件が多発していると」
正太郎が
──五組長会議とは、
・武器の買い付けの承認制度
・武力行使前の通達の義務
・商業
蜘蛛縫組の先代組長
その五組長会議で議題に上るとは。想像以上に事態は深刻なようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます