眼鏡をかけると頭がよくなる説

カニカマもどき

ファミレスにて

「ねえ、ヤス。僕はどうやら、すごいことに気づいてしまったようです」

「何だ、ガク。何に気づいたって?」


 放課後のファミレスに、男子高校生が二人。

 ドリンクバーのオレンジジュースに、ポテトをひたひたにひたして食べていた方の男――ガクは、おもむろにそう言った。

「マンガとかの眼鏡めがねキャラって、だいたい頭がいいじゃないですか」

「まあそうだな」

 熱いいちごオレを飲んでいた方の男――ヤスは答えた。

「ということは、ですよ。逆に考えれば、”眼鏡をかけた人は頭がよくなる”と、そういう見方も成り立つのでは?」


 裸眼視力2.0の、ガクの瞳は輝いている。

「つまり眼鏡さえあれば、僕(前回の中間テストの平均点35点)の頭も、今よりもっとよくなると思うんですよ」

「オイオイ……」

 ヤスが身を乗り出す。

「オイオイオイオイオイオイオイ。お前よぉ~、そういう発想がすでに…………かなり頭いいんじゃねえかよぉ~! オイ!」


 * 


 そういうわけで、二人は、近くのユニケロにやってきたのだ。

「さすがユニケロ。伊達だて眼鏡がたくさんありますね」

「何より安いしな。おっ、コレなんか学校でも使えそうだぞ。ちょっとかけてみろよ」

 豊富なラインナップのサングラスは置いておいて、ヤスが無難なデザインの眼鏡をガクに手渡す。

「おお、これは……頭よさげですね」

 眼鏡をかけ、鏡を見ながら、ガクはそう呟く。


「なんか頭よさそうなこと言ってみろよ」

「えーそうですね……”天才とは、1%の努力と”……あと、えーと……”汗と、涙と、友情と”」

「ヒュー! なんか偉い人のすごい言葉っぽいじゃねえか! えてるねえ、ガク!」

 ヤスは、パチンと指を鳴らして、ガクをすごい褒めた。

「ふふふ。これで、明日の小テストもばっちりですね」


 *


 結果からいうと、ガクの小テストの点数は、率直にいってダメであった。

 より具体的にいうと、20点満点中2点であった。

「何故です。眼鏡をかけてもダメ。前から試している”ですます口調”でもダメ。一体、どうすれば頭がよくなるのか……」

「どうすりゃいいのかねえ」

 普通に勉強をすればいいのでは、という正論を飲み込んで。

 ヤスとガクは、今日も、ファミレスでだらだらしている。

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眼鏡をかけると頭がよくなる説 カニカマもどき @wasabi014

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