温泉は眼鏡が曇るんだよ[KAC20248]

夏目 漱一郎

第1話チャリパイの慰安旅行

森永探偵事務所のテレビで旅番組を観ていたてぃーだ、子豚、ひろきの三人は『いつもこれだけコキ使っているのだから、たまには慰安旅行にでも連れていけ!』と、大騒ぎをしてシチローに無理難題を要求する。シチローは、『そんなに行きたいのなら、この福引きで一等の温泉旅行でも当てるんだな』と、近所のまごころ商店街の福引券を渡すのだが、翌週の日曜に行われた福引抽選会で、なんと!ひろきが一等の『温泉旅行4名様ご招待』を見事に引き当てたのだった。



『横溝旅館』は、古いながらも造りの良さを感じさせる立派な佇まいの旅館であった。

てぃーだ

「なかなか良い雰囲気の旅館ね」

ひろき

「もう、汗でベタベタだよ~早く温泉入ろうよ」


シチローがフロントで受付を済ませている間に、3人はさっさと部屋へ向かって行ってしまった。


ドカドカドカ…


勢いよく階段を登ったかと思ったら、5分もしないうちに浴衣に着替えて温泉に直行する3人。


シチロー

「なんだよ~!オイラ置いてけぼりかよ!」


てぃーだ

「どうせ、お風呂は別々なんだから一緒でしょ。お先に~」


3人は子供のようにはしゃぎながら、シチローを置いて『女湯』の暖簾をくぐっていった。


シチロー

「ふっふっふっ…何も知らないんだな君達は」


誰もいなくなった後で、何故かシチローはほくそ笑んでいた…


シチロー

「ガイド資料によると…ここの温泉は、なのだよ~」


シチローは、ウキウキ気分で浴衣に着替え温泉へと向かった。


シチロー

「いやぁ~アイツらの驚く顔が目に浮かぶ」


シチローは『男湯』の暖簾をくぐった。しかし、脱衣場までは別々でもその中は……


ガラガラ!


シチロー

「…………………メガネが曇って何も見えない…………」


シチローは、極度の近眼であった…


シチロー

「クソ…コンタクトにしとくんだったよ!」


しかも、少し離れた所にいる3人は…


てぃーだ

「やっぱり…水着持って来て良かったわ…」


シチローの野望は、すっかりバレていたのだった。しかし、今温泉に入っている女性はなにもこの3人だけとは限らない。メガネが曇って周りが見えないシチローの傍に、誰かが近づく気配がする…


シチロー

「ん?そこに誰かいますか?」


シチローの問いには答えずに、その相手は大胆にもシチローの腕に触れてきたのだった。


シチロー

「いやぁ、ずいぶん積極的な女性だなぁ~オイラ東京から来たんですけど、貴女はどこからいらしたんですか?」






「ウキ?」




ひろき

「わあ、シチローの所に、おサルさんがいるよ」




子豚

「きっと『仲間』だと思ってるのね」




この露天風呂には、時々野生の猿が入浴に来る事で有名だった…



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